「地方銀行の投資信託は手数料が高い」——そんな話を、どこかで耳にしたことはありませんか。窓口で丁寧に説明してもらえる安心感はある一方で、ネット証券と比べると「なんだか損をしているのでは」と、モヤモヤしてしまう人も多いと思います。
結論からお伝えすると、おなじような中身の投資信託でも、どこで買うかによって手数料は大きく変わります。そして、その差は数年〜数十年という長い時間をかけて、じわじわと運用の結果に効いてきます。
この記事では、投資信託にかかる手数料のしくみを整理しながら、地方銀行とネット証券の違いを、初心者の方にもわかりやすく比較していきます。「高いのか・安いのか」だけでなく、「どんな人ならどちらが向いているのか」まで、やさしく解説していきますので、自分に合った選びかたを見つけるヒントにしてみてください。
まず結論:手数料の差は「長い時間をかけてボディブローのように効く」
投資信託の手数料は、一度きりで終わるものと、保有している間、ずっとかかり続けるものがあります。とくに後者は、金額としては小さく見えても、長い年月の間に大きな差となって現れます。
ざっくりとした傾向をまとめると、次のようになります。
| 比べるポイント | 地方銀行(対面) | ネット証券 |
|---|---|---|
| 購入時手数料 | かかる銘柄が多い | 原則0円(ノーロード)の銘柄が中心 |
| 取扱本数 | 数十〜数百本ていど | 2,000〜2,600本ほど |
| 相談のしやすさ | 窓口で対面相談ができる | 基本は自分で操作 |
| 低コスト投信の品揃え | かぎられることがある | 豊富に揃う |
つまり、地方銀行だから一律に高い、というわけではありません。ただ、「購入時手数料がかかりやすい」「低コストな銘柄の選択肢がかぎられやすい」という点で、結果として割高になりやすい、というのが実際のところです。
まずは「手数料には種類がある」ということから、一緒に整理していきましょう。
投資信託にかかる「3つのコスト」を知っておこう
投資信託の手数料と聞くと、なんとなく「買うときにかかるお金」だけをイメージしがちです。でも、実際には大きく3つのコストがあります。ここを理解しておくと、地方銀行とネット証券の違いも、すっきり見えてきます。
| コストの種類 | いつかかる? | 目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 購入時手数料 | 買うとき(1回) | 0〜3.3%ほど | ネット証券では0円が多い |
| 信託報酬(運用管理費用) | 保有している間毎日 | 年0.1〜2%ほど | 一番見落としやすい |
| 信託財産留保額 | 売るとき(1回) | 0〜0.3%ほど | かからない銘柄も多い |
①購入時手数料:買うときの入口コスト
購入時手数料は、投資信託を買うときに一度だけかかる手数料です。同じ銘柄でも、販売する金融機関によって料率が違うことがあり、なかには0円(ノーロード)のものもあります。
ここが、地方銀行とネット証券で一番差が出やすいところです。ネット証券では購入時手数料が原則0円の銘柄が中心ですが、対面型の窓口では数%かかることも珍しくありません。
②信託報酬:保有している間、ずっとかかる維持費
じつは、一番大事なのがこの信託報酬(運用管理費用)です。これは投資信託を保有している間、毎日すこしずつ差し引かれる「維持費」のようなもの。年率で表示され、たとえば「年0.1%」なら、100万円分保有していると年間およそ1,000円が差し引かれる計算になります。
金額としては小さく見えますが、10年・20年と持ち続けると、じわじわと大きな差になります。あとの章で、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみます。
③信託財産留保額:売るときにかかることがあるコスト
最後は信託財産留保額です。これは投資信託を解約(売却)するときにかかることがある費用で、かからない銘柄もたくさんあります。0.3%ほどが一つの目安です。
この3つのうち、地方銀行とネット証券で差がつきやすいのは「購入時手数料」と、そして選べる銘柄によって変わってくる「信託報酬」です。
地方銀行の投資信託は、本当に手数料が高いの?
ここが、この記事の一番の本題です。結論を先にいうと、「銘柄そのものが高い」というより、地方銀行という販売チャネルの特徴によって割高になりやすい、というのが正確な言いかたです。
おなじ「全世界株式に投資する投資信託」でも、地方銀行の窓口で勧められる銘柄と、ネット証券で人気の低コスト銘柄とでは、信託報酬に数倍〜十数倍の差がつくこともあります。イメージをつかむために、代表的なパターンを比べてみましょう。
| 比べる項目 | 地方銀行でよくあるケース | ネット証券でよくあるケース |
|---|---|---|
| 購入時手数料 | 1〜3%前後かかることがある | 0円が中心 |
| 信託報酬(年率) | 年1〜2%前後の銘柄も目立つ | 年0.1%前後の銘柄が人気 |
| 勧められやすい商品 | バランス型・毎月分配型など | インデックス型(低コスト) |
| 相談体制 | 担当者が対面でサポート | 自分で調べて選ぶ |
もちろん、地方銀行でも低コストのインデックス投信を取り扱っているところは増えています。ですから「地方銀行=すべて高い」と決めつけるのは正しくありません。大切なのは、勧められた銘柄の手数料を自分の目で確認することです。
銀行と証券会社の根本的な違いについては、こちらの記事でさらにくわしく整理しています。合わせて読むと、選びかたの軸がはっきりしてきます。
NISAは銀行と証券会社どっち?やめたほうがいいと言われる理由と、初心者が損しない選び方をチェックする
なぜ地方銀行は、手数料が高くなりやすいの?
「対面で安心なのに、どうして割高になりやすいの?」と思いますよね。これにはいくつかの理由があります。むずかしい話ではないので、順番に見ていきましょう。
理由①:店舗や人件費といった「対面のコスト」がある
地方銀行は、店舗をかまえ、担当者が対面で相談にのってくれます。この手厚いサポートには、当然コストがかかります。その分が、手数料というかたちに反映されやすいのです。ネット証券は店舗を持たない分、そうしたコストを抑えやすい、という構造の違いがあります。
理由②:勧められる銘柄が「販売側の都合」に寄ることがある
窓口で勧められる投資信託は、かならずしも「あなたにとって一番安い銘柄」とはかぎりません。販売する金融機関にとって収益になりやすい銘柄が、優先的に紹介されることもあります。とくに、毎月分配型やテーマ型などは、信託報酬が高めに設定されていることがあります。
理由③:低コストなインデックス投信の選択肢がかぎられがち
ネット証券では、年0.1%前後という極めて低コストなインデックス投信が数多くそろっています。一方、地方銀行では、そうした最安クラスの銘柄が取扱ラインナップに入っていないこともあり、選べる範囲が狭くなりがちです。
具体的にどんな低コスト銘柄が人気なのかは、オルカン(全世界株式)とS&P500の比較記事がわかりやすいので、気になる方はチェックしてみてください。
オルカンとS&P500はどっ違いい?初心者・中間層に向けてデータで比べた解説を読む
地方銀行で投資信託を買う「メリット・デメリット」
手数料の話だけを聞くと「地方銀行はデメリットばかり?」と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。対面ならではのよさも、たしかにあります。メリットとデメリットを、フラットに整理してみましょう。
地方銀行のメリット
一番の強みは、対面で相談できる安心感です。投資がはじめてで、「そもそも何から手をつければいいのかわからない」という方にとって、担当者に顔を見て質問できるのは心強いものです。また、普段使っている口座と一体で管理できる手軽さや、地域に根ざした信頼感もあります。
地方銀行のデメリット
一方で、これまで見てきたように購入時手数料や信託報酬が割高になりやすい点は、見逃せません。さらに、取扱本数がかぎられ、低コストのインデックス投信を選びにくいこと、担当者の異動などで相談相手が変わることも、人によっては気になるポイントです。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 地方銀行(対面) | 対面で相談できる/口座を一元管理しやすい/地域の安心感 | 手数料が割高になりやすい/低コスト投信を選びにくい |
| ネット証券 | 手数料が安い/銘柄が豊富/いつでも取引できる | 基本は自分で判断/対面相談はしにくい |
信託報酬の目安と、手数料が運用結果にあたえる影響
ここまで「手数料は長い時間をかけて効いてくる」とお伝えしてきました。では、実際にどれくらいの差になるのか。信託報酬の目安を整理したうえで、シミュレーションで見てみましょう。
タイプ別の信託報酬の目安
| 投資信託のタイプ | 信託報酬(年率)の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| インデックス型(低コスト) | 年0.1〜0.2%ほど | 指数に連動。ネット証券で人気 |
| バランス型 | 年0.2〜1.5%ほど | 複数の資産に分散 |
| アクティブ型 | 年1〜2%ほど | 運用者が銘柄を選ぶ。高めになりがち |
| 毎月分配型 | 年1〜2%前後も | 分配金が出るが、コストは高めのことも |
手数料の差は、20年でどれくらいになる?
たとえば、100万円を年5%で20年間運用したと仮定し、信託報酬だけが違う場合を比べてみます。あくまで一定の前提を置いた試算ですが、イメージはつかみやすいはずです。
| 信託報酬(年率) | 実質リターンの目安 | 20年後の概算額 | 差 |
|---|---|---|---|
| 年0.1%(低コスト) | 約4.9% | 約259万円 | 基準 |
| 年1.0% | 約4.0% | 約219万円 | 約40万円少ない |
| 年2.0% | 約3.0% | 約181万円 | 約78万円少ない |
いかがでしょうか。おなじ運用でも、信託報酬が年1〜2%違うだけで、20年後には数十万円もの差になり得ます。これが「手数料はボディブローのように効く」と表現される理由です。金額が大きくなるほど、この差はさらに広がっていきます。
毎月いくらずつ積み立てるかで結果も変わってきます。積立額の考えかたは、こちらの記事も参考になります。
NISAの成長投資枠は何を買えばいい?40代が選んだ3つの使いかたを見る
地方銀行が向いている人・ネット証券が向いている人
ここまでを読んで、「じゃあ結局、自分はどっちを選べばいいの?」と思った方も多いはずです。手数料だけで決めるのではなく、自分の性格や、投資にかけられる手間もふくめて考えるのが大切です。
地方銀行が向いている人
つぎのような方は、多少の手数料を払ってでも、対面の安心感を選ぶ価値があります。「自分ひとりで判断するのが不安」「顔の見える相手に相談したい」という方です。とくに、これまで投資の経験がまったくなく、まずは一歩を踏み出す後押しがほしい、という場合には合っています。
ネット証券が向いている人
一方、「手数料はできるだけ抑えたい」「自分で調べるのは苦ではない」という方には、ネット証券が向いています。低コストのインデックス投信を、購入時手数料0円で積み立てられるのは、大きな魅力です。スマホひとつで完結する手軽さもあります。
| こんな人には… | お勧め |
|---|---|
| 対面で相談しながら進めたい | 地方銀行(対面) |
| コストを最優先で抑えたい | ネット証券 |
| スマホで手軽に積み立てたい | ネット証券 |
| まず何を買えばいいか相談したい | 地方銀行(対面) |
なお、株式だけでなく、金(ゴールド)などを組みあわせて資産を分散する考えかたもあります。興味のある方は、こちらもどうぞ。
40代会社員が金投資を始めた理由|S&P500と併用する3つの根拠を読む
よくある質問(Q&A)
Q. 地方銀行で買った投資信託を、あとからネット証券にうつせますか?
おなじ銘柄を取り扱っていれば、金融機関をまたいで移せる(移管できる)ケースがあります。ただし手続きに手間や日数がかかることがあるため、事前に両方の金融機関に確認しておくと安心です。
Q. すでに地方銀行で買ってしまいました。売ったほうがいいですか?
一概には言えません。売るときにかかるコストや、税金、いまの含み益・含み損によって判断は変わります。慌てて売らず、まずは信託報酬などのコストを確認し、必要なら新しい積立分からネット証券を使う、という方法もあります。
Q. 手数料が安ければ、どの投資信託でもいいのですか?
手数料の安さはとても大切ですが、それだけで選ぶのも危険です。どんな資産に、どれくらい分散して投資しているのかという中身の確認も忘れないようにしましょう。
Q. NISAでも手数料はかかりますか?
NISA口座で買っても、信託報酬などのコストはかかります。ただし、NISAなら運用で得た利益に税金がかからないというメリットがあります。制度の違いを押さえておくと、より有利に使えます。
証券会社ごとの違いをもっと知りたい方は、マネックス証券と松井証券の比較もどうぞ
まとめ:手数料を味方につけて、自分に合った選びかたを
今回は、「地方銀行の投資信託は手数料が高いのか?」というテーマで、コストのしくみからネット証券との違い、向き不向きまでを見てきました。最後に、大切なポイントを振り返っておきましょう。
投資信託には購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額という3つのコストがあり、なかでも「保有している間ずっとかかる信託報酬」が、長い目で見ると一番効いてきます。地方銀行は対面の安心感というメリットがある一方で、購入時手数料や信託報酬が割高になりやすく、低コスト投信を選びにくいという面もあります。
大事なのは、「地方銀行だからダメ」「ネット証券が正解」と決めつけることではなく、勧められた銘柄の手数料を自分の目で確認し、自分の性格や手間に合った選びかたをすることです。対面の安心を重視するなら地方銀行、コストと手軽さを重視するならネット証券——そんなふうに、納得して選べるのが一番です。
迷ったときは、まず銀行と証券会社の違いから整理してみると、頭がすっきりします。あなたの資産づくりの一歩を、この記事が後押しできればうれしいです。
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