
墨田区の不動産投資・マンション投資は、いま買いか?
さきに結論:墨田区は、人口が25年で約3割増え、2026年の地価公示では住宅地が+13.2%(東京都区部平均+9.0%)と、数字の上では「需要が伸びている区」です。ただし区内は一枚岩ではありません。錦糸町・両国の「南側」は地価が高く災害リスクが比較的低い一方、押上の北側〜京島・東向島・八広の「北側」は木造密集地で地震危険度ランク5の町丁目が集まるエリアです。投資するなら「墨田区かどうか」ではなく、どの駅の、どの町丁目かで判断してください。
この記事では、大手不動産会社のエリア戦略コンサルティングに携わった経験から、デベロッパーが用地を選ぶときと同じ視点(人口・地価・再開発・交通・ハザード)で墨田区を検証しました。数字はすべて国・東京都・墨田区などの公的データと、事業者の公式発表にもとづいています。
この記事を書いた人:SUNSET
40代の会社員。大手不動産会社向けのコンサルティングで、エリア調査やマーケティング戦略に携わってきました。この記事では、デベロッパーが「この街に建てるか」を判断するときに見る数字を、個人投資家向けに整理しています。プロフィールはこちら
デベロッパーの視点で採点|墨田区投資のスコアカード
コンサルの現場で、デベロッパーが新しいエリアに用地を買うかどうかを判断するとき、必ず確認していたのが次の5項目です。「将来も人が住みたいと思う街か」を、感覚ではなく数字で確かめるための順番でもあります。墨田区を、この5項目で採点しました。
① 人口・世帯
A
25年で約3割増。2050年まで増加の推計。世帯数は人口以上のペースで増加。
② 地価の勢い
A
住宅地+13.2%で区部平均(+9.0%)を上回る。10年で約1.9倍。
③ 再開発・供給
B
大規模開発は点在型。本所・錦糸町・曳舟で2027〜2032年に竣工予定。
④ 交通
A
錦糸町から総武快速で東京駅へ直通。押上は4路線。隣の住吉に有楽町線延伸予定。
⑤ ハザード
C
荒川氾濫で区の大部分が浸水想定。北部に地震危険度ランク5が集中。
※採点は筆者による評価です(A=強み、B=標準、C=要注意)。根拠となるデータは以下の各章で示します。
人口・地価・再開発で見る墨田区の需要
賃貸需要の土台は「住む人の数」です。墨田区の人口は、2000年の約21.6万人から2025年には約28.7万人へ、25年で約33%増えました。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計でも、2050年まで増え続ける見込みです。人口減少が進む日本で、2050年まで増加が見込まれる自治体は多くありません。
墨田区の人口推移と将来推計(万人)
■ 実績(住民基本台帳) ■ 推計(社人研)
出典:実績は総務省「住民基本台帳に基づく人口」(各年1月1日)、推計は国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」。推計は2020年国勢調査(27.2万人)を起点にしているため、住民基本台帳の実績値とは基準が異なります。
コンサルの現場で人口以上に重視していたのが世帯数です。賃貸住宅は「人」ではなく「世帯」が借りるからです。国勢調査で2015年→2020年を比べると、墨田区は次のように動いています。
人口の増加率
+6.2%
25.6万人 → 27.2万人
世帯数の増加率
+11.4%
13.1万 → 14.6万世帯
1世帯あたり人員
1.87人
2020年
出典:墨田区「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」(人口272,085人、世帯数145,768、2015年比 人口+15,811人・世帯+14,906)から筆者計算。
地価で見る墨田区|10年で約1.9倍、区部平均を上回る上昇
マンションの価格は土地の値段に強く連動します。ポータルの掲載価格は「売りたい値段」ですが、地価公示は国が毎年1月1日時点で鑑定する公的な価格なので、エリアの実力を比べるのに向いています。
墨田区の公示地価 平均(万円/㎡・全用途)
2016年 → 2026年
出典:国土交通省「地価公示」の墨田区内の標準地の平均(土地代データによる集計)。地点の入れ替えがあるため、年ごとの平均は参考値です。
| 2026年 地価公示 | 墨田区 | 東京都区部 |
|---|---|---|
| 住宅地の変動率 | +13.2% | +9.0% |
| 商業地の変動率 | +15.0% | +13.8% |
| 住宅地の平均価格 | 約61.3万円/㎡ | — |
出典:東京都「令和8年地価公示価格(東京都分)の概要」(区部平均)、国土交通省「地価公示」墨田区分の集計(土地代データ)。
駅別の地価(2026年・最寄駅別の平均)
単位:万円/㎡(全用途平均)と前年比変動率。出典:国土交通省「地価公示」2026年の最寄駅別集計(土地代データ)。商業地を含むため、駅前に商業地が多い駅ほど高く出ます。
墨田区の都市開発|2027〜2030年代に予定されているプロジェクト
墨田区の再開発は、湾岸エリアのような「街ごとつくり変える」型ではなく、駅周辺や工場・本社跡地での点在型です。主なプロジェクトを時系列で並べます。
2025年3月|錦糸町
錦糸町まちづくりビジョンが区長へ提出。「地下鉄8号線(有楽町線)が延伸した近未来の錦糸町」を想定した将来像を、住民ワークショップ等をもとに整理。
2027年4月(予定)|錦糸町・太平
シティタワー錦糸公園竣工。地上18階・130戸、住友不動産。半蔵門線錦糸町駅徒歩8分。
2029年4月(予定)|本所・隅田川沿い
(仮称)墨田区本所1丁目計画竣工。旧ライオン本社跡地に地上26階・464戸。東京建物・東武鉄道など5社。隅田川のスーパー堤防と一体で整備。
2032年度(予定)|曳舟
曳舟駅東地区(東武曳舟駅と京成曳舟駅の間・約1.7ha)の再開発。地上14階・住宅240戸+店舗の計画で、UR都市機構が事業パートナーを募集。
2030年代半ば(予定)|住吉(錦糸町の隣駅)
有楽町線 豊洲〜住吉 延伸(約5.2km)。2024年11月に着工。住吉〜豊洲が約20分(乗換2回)から約9分(乗換なし)に。住吉は半蔵門線で錦糸町の隣駅です。
出典:墨田区「錦糸町まちづくりビジョン」、住友不動産「シティタワー錦糸公園」公式情報、東京建物ほか事業者発表(本所1丁目計画)、健美家(2026年4月1日)ほか曳舟駅東地区の報道、東京都都市整備局・江東区「地下鉄8号線(有楽町線)の延伸」。予定は変更される可能性があります。
再開発が価格に効くタイミング
コンサルの経験上、再開発が周辺価格に反映されやすいのは「計画の公表時」と「竣工・開業時」の2回です。すでに公表済みの計画は、ある程度は価格に織り込まれていると考えるのが基本です。
新築の供給は「競合」にもなる
本所1丁目(464戸)のような大型物件が竣工すると、賃貸に出される住戸も一定数出てきます。同じ駅で中古を貸す場合、築浅の競合と家賃を比べられることを前提に、設備や家賃設定を考えます。
鉄道計画は「期待」で買わない
有楽町線延伸は2030年代半ばの開業予定で、錦糸町に直接駅ができるわけではありません。延伸を理由に高値で買うのではなく、今の利便性で収支が合う物件を選び、延伸は上振れ要因として見るのが安全です。
エリア別の投資判断|錦糸町・両国・押上・曳舟
ここまでのデータを、駅ごとに整理します。地価・変動率は前章の2026年地価公示、危険度は東京都の地域危険度調査(第9回)にもとづきます。
| 錦糸町 | 両国・菊川 | 押上 | 曳舟・東向島 | |
|---|---|---|---|---|
| 資産価値の保ちやすさ | ◎ | ○ | ○ | △ |
| 利回りの出やすさ | △ | ○ | ○ | ◎ |
| 賃貸需要の厚さ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
| 地震の地域危険度 | 低め | 低め〜中 | 町丁目で差 | 高い町丁目が多い |
| 向く投資家 | 長期保有・出口重視 | バランス重視 | 交通重視・町丁目を選べる人 | 利回り重視・リスク管理できる人 |
※◎○△は地価・変動率・地域危険度・交通条件をもとにした筆者の評価です。
想定ケース(仮定の数字です)|錦糸町の築浅1Kを3,500万円・フルローンで買うと
仮に価格3,500万円、想定家賃11万円、管理費と修繕積立金が月1.6万円、固定資産税などが年10万円とします。表面利回りは約3.8%、経費を引いた実質利回りは約2.9%で、1年に1か月の空室を見込むと約2.6%まで下がります。ここに金利2%・35年のフルローンを組むと、毎月の返済は約11.6万円。家賃11万円では返済だけで足りず、管理費・税を足すと月3万円前後の持ち出しです。
査定の現場でも見るのは「利回りが金利を上回るか」と「売るときの買い手がいるか」の2点です。墨田区は需要が強いぶん価格も上がっており、都心の新築ワンルームと同じく利回りは低く、値上がり益に頼る形になりやすい点は割り切りが要ります。出口は居住用として買う人にも売れる広さ・立地かで決まるため、売却を高く通すコツと、築40年超で起きる修繕・売却の落とし穴もあわせて確認してください。他区との比較は新宿区の1K・1LDK投資と豊島区のワンルーム投資が近い条件です。金利が上がったときの影響は金利上昇シミュレーションで確認できます。
ハザードは最初に見る|水害と地震、墨田区の2つのリスク
デベロッパーが墨田区で用地を検討するとき、最初に確認していたのがハザードです。入居者も金融機関も、そして将来の買い手も、同じ地図を見るからです。
① 水害(荒川・高潮・大雨)
墨田区の水害ハザードマップでは、荒川が氾濫した場合、区の大部分が浸水するおそれがあるとされています。江東5区(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川)では、区外へ逃げる「広域避難」の計画がつくられています。
投資での対策:2階以上の住戸を選ぶ、電気設備・受水槽が地下や1階にないか確認する、長期の浸水で共用部が使えなくなる前提で管理組合の備えを見る。
② 地震(建物倒壊・火災)
東京都の「地震に関する地域危険度測定調査(第9回・2022年)」では、墨田区の14町丁目が最も危険度の高いランク5でした。多くは区の北側、木造住宅が密集する地区です。
投資での対策:新耐震(1981年6月以降の建築確認)のRC造に絞る、前面道路の幅と避難経路を確認する、火災保険・地震保険の保険料を収支に入れる。
地震の総合危険度|ランク5・ランク4の町丁目
| ランク | 町丁目(墨田区) |
|---|---|
| 5 | 押上3、京島2・3、墨田2〜5、立花2、東向島1・5・6、八広2〜4 |
| 4 | 石原1〜4、押上2、菊川1・2、京島1、太平2・3、立花3・4、立川1・2、千歳3、業平2・4、東駒形1〜3、東向島2〜4、文花3、本所2〜4、横川2〜4、向島1〜3・5、八広1・5・6 |
| 1〜3 | 上記以外(例:錦糸、江東橋、両国、亀沢、緑、押上1 など) |
出典:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(墨田区)」第9回(2022年9月公表)。総合危険度は建物倒壊と火災の危険度を合わせた評価で、5段階のうち5が最も高い。建物個別の耐震性とは別の、地域全体の評価です。
墨田区ワンルーム・1LDK 収支シミュレーター
ポータルの「平均利回り」は、物件の築年数や広さがばらばらな数字の平均です。検討中の物件の価格と、同じマンション・近くの賃貸募集で確認した家賃を入れて、実際に手元に残る金額を確かめてください。
投資用マンション 利回り&収支シミュレーター
スライダーを動かすと結果がその場で変わります。初期値は説明用の仮の数字です。
毎月の手残り(家賃−返済−管理費等−税・保険−空室等)
—
—
—
—
—
金利が上がったら?毎月の手残りの変化
前提:元利均等返済。購入諸費用を価格の7%と仮定し、借入額=価格+諸費用−自己資金で計算。実質利回り=(年間家賃×(1−空室等)−管理費等−税・保険)÷(価格+諸費用)。所得税・減価償却は含みません。
プロが見る目安:コンサルの現場では、表面利回りより「実質利回り(NOI利回り)」と「借入金利」の差を重視していました。この差が小さいほど、金利が少し上がるだけで手残りがマイナスになります。差が1%を切る物件は、自己資金を増やすか、価格交渉が前提です。
家賃の調べ方:ポータルの「平均家賃」ではなく、同じマンションや同じ駅・同じ築年帯の募集中の物件を5件以上見て、その下限側で見積もるのが安全です。募集家賃と実際に決まる家賃(成約賃料)には差があります。
プロが物件を見るときの購入前チェックリスト(タップで確認)
デベロッパーが用地を評価するときの視点を、個人が中古マンションを買う場面に置き換えました。10項目すべてに答えられない物件は、買う前に不動産会社に確認しましょう。
0 / 10
少額から試す選択肢:不動産クラウドファンディング
墨田区で現物を買う前に、まず少額で不動産投資の値動きや配当の仕組みに慣れておく方法もあります。不動産クラウドファンディングは、多くの投資家から集めた資金で不動産事業を行い、運用益を分配する仕組みです。サービスによっては少額から出資でき、複数の案件に分けて投資できます。
| 現物マンション投資 | 不動産クラウドファンディング | |
|---|---|---|
| 必要な資金 | 頭金・諸費用・ローン審査が必要 | サービスにより少額から出資可能 |
| 管理の手間 | 入居者対応・修繕などが必要 | 運営事業者が実施 |
| 分散のしやすさ | 1戸に資金が集中しやすい | 複数案件に分けやすい |
| 換金のしやすさ | 売却に時間がかかる | 運用期間中は原則換金できない |
※元本は保証されません。分配金の水準や条件は事業者・案件ごとに異なります。出資前に、必ず公式サイトの契約前書面でリスクを確認してください。投資判断はご自身でお願いします。
墨田区の不動産投資に関するよくある質問
墨田区は不動産投資・マンション投資に向いていますか?
押上と錦糸町、投資するならどちらがいいですか?
墨田区の人口は今後も増えますか?
墨田区で予定されている再開発はありますか?
墨田区の水害リスクは投資判断にどう影響しますか?
地震の危険度が高い地域の物件は避けるべきですか?
墨田区は液状化しやすいですか?
墨田区に活断層はありますか?活断層の近くは避けるべきですか?
利回りはどのくらいを目安にすればいいですか?
まとめ|墨田区は「需要は強い、だから場所を選ぶ」
- 人口:25年で約3割増、2050年まで増加の推計。世帯数は人口の約2倍のペースで増え、単身向けの賃貸需要は底堅い。
- 地価:2026年は住宅地+13.2%(区部平均+9.0%)。10年で約1.9倍。錦糸町・両国の南側が高く、上昇率も大きい。
- 再開発:錦糸公園(2027)・本所1丁目(2029)・曳舟駅東(2032年度)と点在型。有楽町線延伸は上振れ要因として見る。
- ハザード:区の大部分が荒川氾濫の浸水想定、北部に地震危険度ランク5が集中。町丁目・階数・構造で選ぶ。
- 判断:資産性なら錦糸町・両国、バランスなら押上(町丁目を選ぶ)、利回りなら曳舟周辺(条件を厳しく)。
気になる物件があれば、まず町丁目の危険度を確認し、収支シミュレーターで金利が上がっても手残りが残るかを確かめてみてください。
あわせて読みたい
出典・参考
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口」/墨田区「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」
- 国土交通省「地価公示」(墨田区分・最寄駅別の集計は土地代データによる)/東京都「令和8年地価公示価格(東京都分)の概要」
- 東京都都市整備局「地震に関する地域危険度一覧表(墨田区)」第9回(2022年9月)
- 墨田区「水害ハザードマップ」/江東5区大規模水害広域避難計画
- 墨田区「錦糸町まちづくりビジョン」(2025年3月)
- 東京都都市整備局・江東区「地下鉄8号線(有楽町線)の延伸(豊洲〜住吉)」
- 住友不動産「シティタワー錦糸公園」、東京建物ほか「(仮称)墨田区本所1丁目計画」、健美家「東武曳舟駅前で再開発事業の検討開始」(2026年4月1日)
公式情報・参考リンク
合わせて読みたい記事




コメント