親から相続した実家や、誰も住まなくなった家を、どうすればよいか悩んでいませんか。空き家売却は、早く動くほど選択肢が広がり、放置するほど不利になりやすいテーマです。総務省の調査(2023年)では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最多・最高でした。
この記事では、空き家売却の方法、解体するか古家付きで売るかの判断、税金と特例(3,000万円控除)、トラブルと対策を、査定の現場の視点で整理します。私は不動産の査定を12年、物件調査を12年、売買仲介を9年経験し、1,000件を超える相談に関わってきました。
先に結論です。売る方法は、古家付き・更地・買取・リフォームの4つです。解体は固定資産税の特例が外れるため、安易に先に解体しないことが大切です。さらに、相続した空き家は、空き家特例(3,000万円控除)で税金が大きく変わることがあります(2027年12月31日までの売却が対象)。
※本記事は一般的な情報の整理です。個別の税額や特例の可否は、税務署・税理士・自治体にご確認ください(確認日:2026年10月19日)。
空き家を放置するとどうなる?増えるリスクと費用
空き家を持ち続けると、固定資産税は毎年かかります。住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」で税負担が軽くなっており、小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡まで)は、固定資産税の課税標準が価格の1/6、都市計画税が1/3です(東京都主税局)。ところが、特定空家等や管理不全空家等として勧告を受けると、この特例が外れ、税額が大きく上がることがあります。管理不全空家は、2023年12月13日施行の改正空家法で対象に加わりました。

税金以外にも、問題は積み重なります。人が住まない家は、換気や通水がされず、雨漏りやシロアリ、設備の劣化が進みます。傷んだ家は売却価格が下がり、解体が必要になれば費用も増えます。草木の繁茂や倒壊の不安から、近隣とのトラブルになることもあります。遠方に住んでいる場合は、草刈りや見回りの交通費と手間も続きます。
空き家は、持っているだけでコストと劣化が進む資産です。売却や活用を考えるなら、状態が悪くなる前のほうが、選択肢は多くなります。人口減少が進む中での不動産の二極化については、人口減少で不動産は二極化する?関東のデータで検証も参考にしてください。
※以下は計算のための想定ケースです。遠方に住む相続人が、年6回(往復2万円)の見回りに通い、草刈りや清掃を業者に依頼しているとします。年間の維持費は、固定資産税が約2.8万円、交通費が12万円、草刈り・清掃が6万円、保険料が3万円、水道・電気の基本料金が3万円で、合計約26.8万円です。5年間続けると、約134万円になります。
| 項目(想定) | 年間の費用 |
|---|---|
| 固定資産税 | 約2.8万円 |
| 見回りの交通費(年6回) | 約12万円 |
| 草刈り・清掃 | 約6万円 |
| 保険料 | 約3万円 |
| 水道・電気の基本料金 | 約3万円 |
| 合計 | 約26.8万円 |
これらの維持費は、売却時に譲渡費用として差し引けません(修繕費や固定資産税は対象外)。つまり、売るのが遅れるほど、手元に残るお金が減っていく構造です。家財の整理(遺品整理)にも時間がかかるため、早めに着手しておくと、売却がスムーズに進みます。
空き家を売る4つの方法|メリットとデメリット
空き家を売る方法は、大きく4つに分けられます。まず、全体像を比較表で確認しましょう。

古家付きで売る方法は、建物を残したまま土地として売ります。解体費がかからず手間も小さい反面、建物の状態によっては買い手が限られます。購入後にリフォームして住みたい人や、建て替え前提の人が主な買い手です。
解体して更地で売る方法は、買い手が建物の状態を気にせず、土地の活用をイメージしやすいため、売りやすくなることがあります。ただし、解体費用がかかり、固定資産税の特例も外れます。
不動産会社に買い取ってもらう方法は、買い手を探す必要がなく、早く現金化できます。一般に、仲介で売る場合より価格は低めになります。一方、条件次第で残置物があっても対応してもらえるなど、手間を減らせる利点があります。
リフォームして売る方法は、修繕費を売却価格に上乗せできるとは限らないため、慎重な判断が必要です。また、自治体が運営する「空き家バンク」を使えば、地方の空き家で買い手や借り手が見つかりやすくなる場合があります。
| 方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 古家付きで売る | リフォーム前提・建て替え前提の買い手が見込める | 建物の状態しだいで買い手が限られる |
| 更地で売る | 建物が老朽化し、土地として売るほうが有利 | 解体費がかかり、固定資産税の特例が外れる |
| 買取 | 早く現金化したい・手間を減らしたい | 仲介より価格が低めになる傾向 |
| リフォームして売る | 立地が良く、修繕で価値が上がる見込みがある | 工事費を回収できるとは限らない |
買取では、売主の契約不適合責任を免責とする条件になることが多く、引き渡し後のトラブルを避けやすい点も利点です。ただし、価格は仲介より下がりやすいため、買取価格と仲介の想定価格の両方を聞いて、手取りで比較することが大切です。
解体するか、古家付きで売るか|判断のポイント
判断の軸は、建物の状態と安全性、買い手の層、解体費用を回収できるかの3つです。次のフローで整理してみてください。

特に注意したいのが、解体後は固定資産税の特例が外れることです。固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)の状態で判定され、更地になっていると住宅用地の特例は適用されません。試算してみましょう。

※以下は計算のための想定ケースです。土地の評価額が1,200万円(200㎡以下)の場合、特例ありの固定資産税は約2.8万円、更地では約16.8万円です(標準税率1.4%・都市計画税を除く)。差額は約6倍にもなります。解体するなら、1月1日をまたぐタイミングと売却時期を必ず意識してください。
一方、解体費用は、売却のためにかかった費用として「譲渡費用」に含められます(国税庁 No.3255)。仲介手数料や、売主が負担した印紙税も譲渡費用です。ただし、修繕費や固定資産税は譲渡費用になりません。
私の経験上、売る前に、先に解体しないほうが良いケースが多くあります。買い手が解体前提で購入するケースも多く、先に解体して費用を負担しても、その分が価格に反映されるとは限らないためです。まず査定を取り、不動産会社に「古家付き」と「更地」の両方の想定価格を聞いてください。
空き家売却の流れ|7ステップで整理

最初に確認したいのは、権利関係です。登記上の名義が亡くなった方のままでは、売却できません。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が必要です。相続した不動産の流れ全体は、相続した不動産の売却|流れ・税金・書類は誰に頼む?で詳しく解説しています。共有名義の場合は、相続人全員の合意が必要です。
次に、現状を把握します。境界が確定しているか、残置物がどれくらいあるか、建物に雨漏りやシロアリがないかを確認します。そのうえで、複数の不動産会社に査定を依頼し、価格の根拠を聞いて比べましょう。
売買契約では、契約不適合責任の扱いが重要です。古い空き家では、建物の状態を買主に説明したうえで、売主の責任を限定する特約を付けるケースが一般的です。取り決めの内容は、不動産会社と書面でしっかり確認してください。最後に、売却した翌年に確定申告をして、特例を申告します。
売却にかかる主な費用を、表にまとめます。見積りは、必ず複数社で取ってください。
| 費用 | 目安・ポイント |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格が400万円超の場合、上限は「価格×3%+6万円(税別)」 |
| 解体費用 | 建物の構造・広さ・立地で大きく変わるため、見積りで確認 |
| 測量・境界確認費 | 境界が未確定の場合に必要になることがある |
| 残置物の処分費 | 量が多いほど高くなる。買取なら対応してもらえることも |
| 登記費用(相続登記) | 登録免許税は、不動産の価額の0.4%(司法書士に依頼する場合は報酬も別途) |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付(売主負担分は譲渡費用) |
| 譲渡所得の税金 | 利益が出た場合に、翌年の確定申告で納付 |
なお、自治体によっては、老朽化した空き家の解体費用に補助金を出している場合があります。ただし、制度の内容や期限は自治体ごとに異なるため、着手前に市区町村の窓口で確認してください。契約や工事を始めてからでは、補助の対象外になる場合があります。
空き家売却の税金と特例|3,000万円控除で数百万円変わる
空き家を売って利益が出ると、譲渡所得として税金がかかります。計算式は「売却額 −(取得費 + 譲渡費用)」です。所有期間が5年を超える長期譲渡の場合、税率は約20.315%(所得税15%、復興特別所得税、住民税5%)です。5年以下の短期譲渡は税率が約2倍(39.63%)になりますが、相続した場合は、取得時期を亡くなった方から引き継ぐのが原則です(国税庁 No.3270)。
取得費が分からない場合は、売却額の5%を取得費にできます(国税庁 No.3258)。たとえば3,000万円で売れた場合は、150万円です。実際の取得費が5%を下回る場合も、5%を使えます。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 譲渡所得 | 売却額 −(取得費+譲渡費用) | 国税庁 No.3202 |
| 長期譲渡(5年超) | 約20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%) | 国税庁 No.3208 |
| 短期譲渡(5年以下) | 約39.63% | 国税庁 No.3208 |
| 取得費が不明な場合 | 売却額の5%を取得費にできる | 国税庁 No.3258 |
| 譲渡費用になるもの | 仲介手数料・印紙税・取壊し費用など | 国税庁 No.3255 |
そして最も効果が大きいのが、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除、いわゆる空き家特例です。主な要件は次のとおりです。

相続人が3人以上いる場合、控除の上限は1人あたり2,000万円になります。また、この特例と、相続税の取得費加算の特例は、どちらか有利なほうを選ぶ形になります(国税庁 No.3306・No.3267)。売却期限が2027年12月31日までと決まっているため、対象になりそうな方は、早めに動くことが大切です。
※以下は計算のための想定ケースです(相続人が1人で、要件をすべて満たす場合)。2,000万円で売却し、取得費は概算の5%(100万円)、仲介手数料は上限(2,000万円×3%+6万円=66万円、消費税込み72.6万円)、解体費が150万円とします。譲渡所得は、2,000万円 − 100万円 − 72.6万円 − 150万円 = 1,677.4万円です。特例を使わなければ、税額は約341万円。特例を使えば、譲渡所得が3,000万円の控除でゼロになり、税額も0円になります。

特例の適用には、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。要件の細かい確認や申告は、税務署や税理士に相談してください。
売却のタイミングは、3つの期限から逆算します。1つ目は、空き家特例の期限(相続から3年後の年末、かつ2027年12月31日まで)です。2つ目は、相続税の取得費加算を使う場合の、相続税の申告期限の翌日から3年以内という期限です。3つ目は、解体する場合の、1月1日をまたぐ固定資産税の判定です。
また、売却には、査定から引き渡しまで数か月かかるのが一般的で、買い手が見つからなければ、さらに長引きます。期限が迫ってから動くと選択肢が減ってしまうため、相続が決まったら、早めに査定を取ることをおすすめします。
空き家売却でよくあるトラブルと対策
境界が不明確なケースは非常に多く、買い手がつかない原因になります。売却前に、土地家屋調査士に境界確認や測量を依頼することも検討しましょう。測量費は、売却の条件として必要になる場合があります。
残置物が多い場合は、片付け費用が負担になります。不動産会社の買取や、残置物の処分も含めた売却を選ぶと、手間を減らせます。
共有名義や相続登記の未了は、売却を止める大きな要因です。相続人の一人が反対したり、連絡が取れなかったりすると、売却が進みません。早めに相続人全員で話し合い、代表者を決めて動くことが重要です。
買い手がつかない場合は、価格の見直し、買取、空き家バンクの活用を検討します。相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日開始)という選択肢もありますが、要件があるため、法務局で確認が必要です。
不動産会社の選び方と、査定の取り方
空き家の査定では、複数の会社に依頼して、価格の根拠を比べることが基本です。査定額だけで決めず、「なぜその価格なのか」「古家付きと更地では、いくら違うのか」を聞いてください。空き家の取り扱い実績や、買取と仲介の両方を提案してくれるかも、見極めのポイントです。
査定額が極端に高い会社には、注意が必要です。媒介契約を取るために高く提示し、後から値下げを提案するケースがあるためです。最も高い査定額ではなく、根拠が納得できる会社を選ぶようにしてください。売却全般のコツは、不動産を高く売るコツ10選にまとめています。築年数が古い物件の特徴は、築40年のマンションを買うデメリットも参考になります。
売却後のお金の使い道と、関連知識
空き家を売ったあとのお金は、納税資金、生活防衛資金、ローンの返済、運用などに分けて考えます。まず、税金(確定申告)の資金を確保しておくことが大切です。そのうえで、貯金の目安や増やし方は40代の貯金の平均と中央値は?世帯別の実態と増やし方、元本を守りながら置く方法は個人向け国債 変動10年の金利は?仕組みと中途換金の注意点、長期で増やす方法は新NISA完全ガイドが参考になります。
売却代金を、住み替えの頭金に使う方もいます。その場合は、住宅ローンの知識も役立ちます。銀行ごとの金利や手数料は住宅ローンはどこが一番安い?、金利や税金の負担を減らす考え方は住宅ローン、金利も税金も減らせる?知らないと損する7つの話、借り換えのタイミングは住宅ローンの借り換えはするべき?で解説しています。住まいの固定費を抑える選択肢としては、一生賃貸のメリット7選も参考になります。
よくある質問
Q. 空き家は、解体してから売るべきですか?
先に解体せず、まず査定を取るのがおすすめです。古家付きと更地の想定価格を比べ、固定資産税の特例が外れる影響も含めて判断してください。
Q. 3,000万円控除は、いつまで使えますか?
空き家特例は、2027年12月31日までの売却が対象です。あわせて、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限もあります。
Q. 相続登記をしていない空き家は、売れますか?
名義が亡くなった方のままでは、売却できません。先に相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されています。
Q. 売れない空き家は、どうすればいいですか?
価格の見直し、不動産会社による買取、自治体の空き家バンクなどを検討します。条件を満たす場合は、相続土地国庫帰属制度も選択肢になります。
まとめ|空き家売却は「早く・先に解体せず・特例を確認」
空き家売却のポイントは、次の3つです。放置するほど費用と劣化が進むので、早めに動くこと。先に解体せず、まず査定を取ること。そして、相続した空き家なら、3,000万円控除(空き家特例)の要件と期限を確認することです。
空き家の状態や権利関係は、一件ごとに違います。まずは、複数の不動産会社と専門家に相談し、自分のケースでの選択肢を整理してみてください。
出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例/No.3255 譲渡費用となるもの/No.3258 取得費が分からないとき/東京都主税局 固定資産税・都市計画税/総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査


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