「変動金利のまま、なんとなく払い続けている」「住宅ローン控除は最初の年に言われるまま申請しただけ」。相談を受けていて、こうした方は本当に多いです。私は大手不動産会社で販売・開発・コンサルティングに携わり、売買の相談にも数多く対応してきました。住宅ローンは、借りたあとにも減らせる余地がたくさん残っています。この記事では金利を減らす4つと税金を減らす3つを、国や自治体の公式データと試算グラフで見える形にまとめます。
減らす方法
減らす制度
試算つき
金利は①借り換え②繰上返済③金利タイプ④団信、税金は⑤住宅ローン控除⑥贈与税の非課税⑦すまい給付金(すでに終了)。金額が大きいのは借り換えと住宅ローン控除で、モデルケースではどちらも200万円を超えます。ただし控除は年収と借入額の組み合わせで、戻る額が大きく変わります。
- 同じ借入でも、総支払額に数百万円の差がつく理由
- 【金利編①】借り換えはいくら得?損益分岐点で判断する
- 【金利編②】繰上返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」どっちが得?
- 【金利編③】変動・固定どれを選ぶ?金利が上がると返済はいくら増える?
- 【金利編④】団信の見直し|保障が重なっていないか
- 【税金編①】住宅ローン控除はいくら戻る?年収別シミュレーション
- 【税金編②】親からの資金援助は非課税にできる?贈与税の非課税枠
- 【税金編③】すまい給付金は終わった?いま使える支援は
- あなたはどこから見直す?ケース別の優先順位
- 結局、どれが一番効く?金額インパクトを比べる
- 今日からできるチェックリスト
- よくある質問
- あわせて読みたい記事
同じ借入でも、総支払額に数百万円の差がつく理由
住宅ローンは契約して終わりではありません。金融機関から「もっと安いプランがありますよ」と連絡が来ることはまずなく、税金の制度も自分で申請しないと1円も戻りません。現場で見てきたのは、契約時に決めたことを「変えられない」と思い込んで、そのまま何年も過ごしてしまう方です。金利タイプも団信も契約後に見直せます。まずは全体像です。
【金利編①】借り換えはいくら得?損益分岐点で判断する
借り換えは、今のローンを完済して、より低い金利のローンに組み替える方法です。得かどうかは「金利差」「残高」「残り期間」の3つで決まります。試算すると、残高2,500万円・残り30年で金利が1.5%から0.7%に下がる場合、毎月の返済は約8.6万円から約7.7万円へ、月に約9,300円減ります。総利息は約606万円から約272万円で、差は約334万円です。
諸費用(保証料・手数料・登記費用など)を仮に50万円としても、約4.5年で元が取れ、最終的には約284万円のプラスです。逆に、残高が少ない・残り期間が短い場合は、諸費用のほうが大きくなることもあります。私が相談で使っていた目安は次のとおりです。
| 金利差 | 目安の判断 | ポイント |
|---|---|---|
| 1%以上 | 借り換えを検討 | 残高1,000万円以上・残り10年以上ならほぼ得になりやすい |
| 0.5〜1% | 諸費用しだい | 損益分岐を試算して回収年数が残り期間より短ければ有利 |
| 0.3%未満 | 慎重に | 諸費用が回収できず、手間だけ増えることが多い |
※上の表は私の現場経験にもとづく目安で、公的な基準ではありません。実際の諸費用や審査条件は金融機関によって異なります。
現場で多かった借り換えの失敗
①金利だけで比べて、諸費用を入れていない。②借り換え先の団信の条件が変わり、保障が薄くなった。③金利は下がったのに、返済期間を延ばして総額が増えた。この3つは、相談の現場で何度も見ました。比べるのは「毎月の額」ではなく「諸費用込みの総支払額」です。
タイミングや失敗例は住宅ローンの借り換えはするべき?後悔しないタイミングと失敗例・注意点まとめ、借り換え先の比較は住宅ローンはどこが一番安い?銀行別に金利・手数料を徹底比較で整理しています。
【金利編②】繰上返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」どっちが得?
繰上返済には2種類あり、利息を減らす力は期間短縮型のほうが大きいのが基本です。3,000万円・35年・金利1.0%で、10年後に300万円を繰上返済した場合を試算しました。
| 期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
|---|---|---|
| 効果 | 返済が約3年8か月早く終わる | 毎月の返済が約8.5万円→約7.3万円 |
| 総利息の削減 | 約78万円 | 約39万円 |
| 向いている人 | 教育費などのピークがまだ先の世帯 | 月々の家計に余裕を作りたい世帯 |
住宅ローン控除は年末の残高に0.7%をかけて計算するため、繰上返済で残高を大きく減らすと、その分控除額も減ります。控除率0.7%より金利が高いローンを優先して返すのが基本で、金利が0.7%を大きく下回る低金利ローンなら、控除期間中は無理に急がない判断もあります。手元資金を使い切るのは避けてください。
なお、繰上返済に回す前に、生活費の半年分程度の手元資金は残すようにしてください。返した分は戻ってこないため、急な出費に備えられなくなるのが、現場で一番避けたいケースです。
【金利編③】変動・固定どれを選ぶ?金利が上がると返済はいくら増える?
住宅金融支援機構の調査では、直近の借入者の76.9%が変動型を選んでいます。金利が低い時期に選びやすい一方、上昇局面では返済額が増えるリスクがあります。3,000万円・35年で金利が変わった場合の返済額を見てください。
出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」(jhf.go.jp)
金利が0.5%から2.0%に上がると、毎月の返済は約7.8万円から約9.9万円へ、月に約2.1万円増えます。年間では約25万円、総利息は約270万円から約1,170万円へと大きく変わる計算です。実際の変動金利は5年ルールなどで返済額の上昇が抑えられる場合がありますが、その分、元金の減りが遅れる点は見落とせません。
私の見立てでは、選ぶ基準は「金利の高い・低い」より返済額が上がったときに家計が耐えられるかです。変動型を選ぶなら、毎月の返済に加えて、金利が2%上がった額(上のグラフ)を払っても生活が回るかを、先に確認してください。
| タイプ | 金利の水準 | 返済額の変動 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 変動型 | 当初は低め | 上がる可能性あり | 繰上返済で元金を減らせる、家計に余裕がある人 |
| 固定期間選択型 | 中間 | 期間終了後に再設定 | 子育て期など数年間の負担を固定したい人 |
| 全期間固定型 | 高め | 完済まで変わらない | 返済額の変動が不安な人 |
金利の見通しは住宅ローンの金利はどこまで上がる?日銀利上げ後の変動・固定の予想と返済額シミュレーター、家計への影響は日銀利上げ1.25%で家計はどう変わる?で試算できます。
【金利編④】団信の見直し|保障が重なっていないか
団体信用生命保険(団信)は、契約者が亡くなったり高度障害になったりしたときにローン残高がゼロになる保険です。がん・三大疾病・全疾病などの保障を付けられる商品も多く、そのぶん金利が上乗せされる場合があります。見直しのコツは、すでに入っている生命保険・がん保険との重複を探すことです。
| 団信の種類 | 主な保障 | 見直しのポイント |
|---|---|---|
| 一般団信 | 死亡・高度障害 | 基本の保障。金利上乗せなしの商品が多い |
| がん団信 | 上記+がんの診断など | がん保険と重複していないか確認 |
| 三大疾病・全疾病 | がん・心疾患・脳卒中など | 保障の範囲と支払条件を必ず確認 |
※保障内容・上乗せ金利・支払条件は金融機関ごとに異なります。詳細は各金融機関の商品説明で確認してください。
銀行別の比較は住宅ローンの残高が”0円になる基準”を全部整理|団信・がん団信・三大疾病・全疾病・ペアローンの違いを銀行別に比較にまとめています。
【税金編①】住宅ローン控除はいくら戻る?年収別シミュレーション
ここが一番知りたい部分だと思います。住宅ローン控除は「年末ローン残高×0.7%」が戻ってくる制度、と説明されがちですが、実際は納めている税金が上限です。所得税から差し引き、引ききれない分だけ翌年の住民税から(最大9.75万円まで)差し引かれます。
出典:総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」(soumu.go.jp)。個人住民税の控除限度は前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円が限度)。
年収別の控除額(1年目の目安)
年末残高3,000万円なら、計算上の控除額は年21万円です。これが満額戻るのは、年収がいくらからでしょうか。国税庁の所得税の計算式で試算しました。
| 年収 | 所得税額 | 住民税の控除枠 | 控除額(残高3,000万円) | 控除額(残高4,000万円) |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 3.5万円 | 3.45万円 | 6.9万円 | 6.9万円 |
| 400万円 | 6.4万円 | 6.40万円 | 12.8万円 | 12.8万円 |
| 500万円 | 11.6万円 | 9.75万円 | 21.0万円 | 21.3万円 |
| 600万円 | 18.1万円 | 9.75万円 | 21.0万円 | 27.8万円 |
| 700万円 | 27.6万円 | 9.75万円 | 21.0万円 | 28.0万円 |
| 800万円 | 42.6万円 | 9.75万円 | 21.0万円 | 28.0万円 |
| 1000万円 | 76.7万円 | 9.75万円 | 21.0万円 | 28.0万円 |
試算の前提:独身・扶養なし、社会保険料は年収の15%、令和7年分の給与所得控除・基礎控除・税率(国税庁)で計算。復興特別所得税は含めていません。令和8年分以降は控除額の引き上げで所得税がやや下がるため、実際の戻り額はこれより少し小さくなる場合があります。
年収500万円なら残高3,000万円でほぼ満額(約21万円)、年収400万円だと約12.8万円で頭打ち、年収300万円なら約6.9万円です。年収が低いまま借入額を増やしても、控除は増えないことがわかります。配偶者や扶養がいると税額がさらに小さくなるため、共働きのペアローンなら夫婦それぞれで控除を受ける形になります。
控除額は3,000万円×0.7%=21万円。納めている所得税は約11.6万円なので全額を差し引き、残り約9.4万円が翌年の住民税から差し引かれます(上限9.75万円の範囲内)。合計で約21万円が戻る計算です。
13年間ではいくら?
控除額は年末残高に連動するため、毎年少しずつ減っていきます。3,000万円・35年・金利1.0%・年収600万円なら、1年目は約20.5万円、13年目は約14.0万円で、13年間の合計は約225万円です。年収400万円なら合計は約166万円、年収300万円なら約90万円にとどまります。
借入限度額と最大控除額
年末残高のうち控除の対象になるのは、住宅の性能ごとに決まった借入限度額までです。国土交通省が示す、令和6・7年入居の場合の最大控除額(13年間)は次のとおりです。
| 住宅の性能 | 一般の世帯 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
|---|---|---|
| 認定長期優良・低炭素住宅 | 409.5万円 | 455万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 318.5万円 | 409.5万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 273万円 | 364万円 |
出典:国土交通省「住宅ローン減税」(mlit.go.jp)。子育て世帯・若者夫婦世帯は、19歳未満の子がいる、または夫婦のどちらかが40歳未満の世帯。
適用期限は令和12年(2030年)末入居まで5年間延長されました。省エネ性能の高い既存住宅は借入限度額の引き上げと控除期間13年への拡充、床面積要件の40㎡への緩和も行われています。ただし新築の限度額は入居年と省エネ性能で変わるため、ご自身の入居年の正確な数字は、契約前に国土交通省の住宅ローン減税のページで必ず確認してください。
控除を受けるための主な条件と手続き
| 項目 | 内容の目安 |
|---|---|
| ローンの返済期間 | 10年以上 |
| 合計所得金額 | 2,000万円以下 |
| 床面積 | 原則50㎡以上(要件により40㎡以上) |
| 居住 | 入居後、自ら住むこと |
| 1年目の手続き | 確定申告(例年2月中旬〜3月中旬) |
| 2年目以降 | 会社員は年末調整で手続き |
※細かな要件は入居年や住宅の種類で異なります。国土交通省・国税庁の案内で最新の内容を確認してください。
控除で損をしがちな3つの落とし穴
①省エネ性能の証明書を取り忘れる。区分が下がると限度額が下がります。②入居後の確定申告を忘れる。1年目は原則自分で申告が必要です。③繰上返済で残高を減らしすぎる。前述のとおり控除額も減ります。私が相談で一番多く見たのは①と②でした。
【税金編②】親からの資金援助は非課税にできる?贈与税の非課税枠
父母や祖父母から住宅取得のための資金を贈与された場合、一定額までは贈与税がかかりません。国税庁によると、非課税枠は省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円、令和8年12月31日までの贈与が対象です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.4508(nta.go.jp)、No.4408(贈与税の税率)
この制度を使わず、通常の暦年課税(基礎控除110万円、18歳以上の特例税率)で800万円を受け取ると、(800万円−110万円)×30%−90万円=約117万円の贈与税がかかります。非課税枠を使えば0円です。ただし、非課税でも贈与を受けた翌年の申告が必要で、床面積や所得など細かい要件は国税庁の案内で確認してください。
贈与税の非課税を使うときの注意点
①贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅を取得し、居住するのが原則です。②贈与を受ける人の年齢や所得などの要件があります。③非課税でも申告は必要です。特に③を忘れて、本来かからない税金の扱いで揉めるケースを見てきました。契約前に税務署か税理士へ確認しておくと安心です。
【税金編③】すまい給付金は終わった?いま使える支援は
すまい給付金は消費税率引き上げの負担を軽くするための制度で、上限は当初30万円、のちに50万円へ拡充されました。申請受付は令和6年(2024年)3月に終了しており、いまから申請することはできません。
出典:国土交通省「すまい給付金」(mlit.go.jp)
いまは、省エネ性能の高い住宅の新築・リフォームを対象とした国の補助事業が中心です。令和8年度は国土交通省・経済産業省・環境省の連携で「みらいエコ住宅2026事業」が実施されています。補助額や対象は年度ごとに変わり、予算に達すると締め切られるため、契約・着工の前に公式サイトで最新の状況を確認してください。
みらいエコ住宅2026事業(公式)で対象・補助額・受付状況を確認できます。
あなたはどこから見直す?ケース別の優先順位
ここまでの内容を、状況別にまとめました。私が相談を受けるときに、最初に確認する順番に近いものです。
| あなたの状況 | まず見直すこと | 次に |
|---|---|---|
| 購入前・契約前 | 控除の対象になる性能か確認/親の援助は非課税枠を検討 | 金利タイプは返済額が上がっても耐えられるかで選ぶ |
| 入居1〜3年目 | 確定申告・年末調整の書類を確認 | 金利差が大きければ借り換えを試算 |
| 金利が高いローン(1.5%以上)を返済中 | 借り換えの損益分岐を試算 | 団信の保障の重複を確認 |
| 年収が低めで借入が大きい | 無理のない返済額か、金利上昇時の負担を確認 | 繰上返済は手元資金を残して少額から |
※一般的な整理であり、個別の状況で最適な順番は変わります。
結局、どれが一番効く?金額インパクトを比べる
ここまでの試算で、金額が大きかった順に並べました。借り換えと住宅ローン控除は、どちらも200万円を超える一方、繰上返済の利息削減は手元資金の使い方で変わります。
大切なのは、金利と税金は窓口が別だということです。金利は金融機関、控除は税務署(と勤務先の年末調整)。だからこそ、年に1回、両方をまとめて点検する習慣が、いちばん確実な節約になります。
今日からできるチェックリスト
- ローン残高・金利タイプ・残り期間を確認する
- 借り換えの損益分岐(回収年数)を試算する
- 繰上返済は「控除率0.7%より高い金利」から優先して検討する
- 団信の保障と、加入中の生命・がん保険の重複を書き出す
- 年末残高証明書と省エネ性能の証明書を保管する
- 親の援助を受けるなら、贈与税の非課税と翌年の申告期限を確認する
- 契約・着工前に国の補助事業の受付状況を確認する
よくある質問
Q. 年収が低いと住宅ローン控除は意味がありませんか?
Q. 住宅ローン控除は毎年自分で申請が必要ですか?
Q. 借り換えと繰上返済はどちらを先にやるべきですか?
Q. 贈与税の非課税枠と住宅ローン控除は併用できますか?
Q. すまい給付金はもう申請できませんか?
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※本記事は2026年9月時点の公表情報と、本文記載の前提にもとづく試算です。実際の税額・控除額・諸費用は個人の状況や金融機関により異なります。税制・補助制度は年度ごとに改正されるため、国税庁・国土交通省・総務省・お住まいの自治体・借入先の最新情報をご確認ください。個別の税務・ローンの相談は税理士・ファイナンシャルプランナー・金融機関へお願いします。


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