不動産の囲い込みとは?見抜き方と売主の対策

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家を売りに出したのに、なかなか内見が入らない。不動産会社からは「反響が少ないですね」と言われる。そんなとき、疑っておきたいのが「囲い込み」です。囲い込みとは、不動産会社が自社で買主も見つけて両手仲介の手数料を得るために、他社からの紹介や問い合わせを断る行為のことです。売主にとっては、買い手と出会う機会が減り、売却価格や期間で損をするおそれがあります。

私は不動産の査定を12年、物件調査を12年、売買仲介を9年経験し、1,000件を超える相談に関わってきました。この記事では、囲い込みの仕組みと、2025年から変わったレインズのルール、売主が自分で見抜く方法と対策を、公的資料に基づいて整理します。

先に結論です。①囲い込みは、売主と会社の利益が食い違う構造から起きます。②2025年1月から取引状況の登録が義務になり、売主は専用画面で自分の物件の状況を確認できるようになりました。③専任媒介で契約したら、登録証明書と売主専用画面を必ず確認することが対策の第一歩です。

※本記事は一般的な情報の整理です。すべての会社が囲い込みを行うわけではありません。制度は変更される場合があるため、最新情報は国土交通省や依頼先の会社でご確認ください(確認日:2026年10月19日)。

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囲い込みとは?両手仲介の仕組みを整理

不動産会社の収入は、売買が成立したときの仲介手数料です。売買価格が400万円を超える場合、上限は「売買価格×3%+6万円(税別)」と定められています。たとえば3,000万円の物件なら、上限は96万円(税別)です。

ここで重要なのが、片手仲介と両手仲介の違いです。売主側だけを担当すれば片手仲介で、手数料は売主からの1回分です。売主と買主の両方を自社で担当すれば両手仲介となり、売主・買主の双方から手数料を受け取れるため、3,000万円の物件なら上限で192万円(税別)になります。

囲い込み 不動産|片手仲介と両手仲介の仲介手数料の違い(囲い込みの仕組み)

両手仲介そのものは、違法ではありません。問題になるのは、両手仲介を狙うあまり、実際には紹介できる他社の買主を断る行為です。これが「囲い込み」です。

もう一つ押さえておきたいのが「レインズ」です。レインズ(不動産流通機構の情報システム)は、不動産会社だけが見られるネットワークで、専任媒介・専属専任媒介の物件は、登録が義務づけられています。登録された物件は、他の不動産会社も閲覧でき、その会社が連れてきた買主を紹介できる仕組みです。レインズ上で「紹介できない」状態になっていると、売主は買い手と出会う機会を失います。

両手仲介が起きやすいのは、売主の依頼を受けた会社が、売主の物件情報を最初に握っているからです。専任媒介や専属専任媒介で預かった物件は、他社に紹介されなければ、自社に来た買主候補にだけ案内できます。買主を自社で見つけられれば手数料は2倍、見つからなくても売主側の手数料は入る。この構造では、「他社に情報を出さない」ほうが会社にとって合理的になりやすいのが実情です。現場では、他社からの問い合わせに「商談中です」「内覧の予約が入っています」と答えて断る例が、典型的な囲い込みとして知られています。

なぜ囲い込みが起きる?構造を査定のプロの目線で解説

囲い込みが起きる背景には、売主と会社の利益が食い違う構造があります。売主の利益は、できるだけ高く、できるだけ早く売ることです。一方、会社の利益は、手数料です。同じ物件でも、片手なら96万円、両手なら192万円と、手数料が2倍になります。

また、会社は、査定の段階で売主から専任媒介契約を取りたいと考えます。専任媒介なら、その物件を自社だけで扱えるためです。そのため、高めの査定額を提示して契約を取り、その後は自社で買主を探したくなる、という動機が生まれやすい構造があります。

もちろん、多くの会社は、売主の利益を第一に動いています。ただ、構造としてそうした動機が生まれやすいことは、売主として知っておくべきです。知っていれば、確認すべきポイントが分かります。

もう一つ見落とされやすいのが、売主に「反響が少ない」と伝えるだけで、実際には他社からの問い合わせを断っているケースです。売主から見ると、広告は出ているのに内見が入らない状態が続きます。すると「相場より高いのかもしれない」と考えて値下げに応じやすくなります。値下げの原因が価格ではなく、情報の出し方にある可能性を切り分けないと、不要な値下げにつながります。

囲い込みで売主が受ける損害|想定ケースで確認

囲い込みの損害は、大きく3つに分けられます。1つ目は、買い手と出会う機会の損失です。他社経由で購入希望者が現れても、断られれば、売主は知る機会さえありません。2つ目は、価格の下落です。売り出しから時間が経つと、一般に、買い手から値引き交渉をされやすくなり、売主は価格を下げざるを得なくなります。3つ目は、売却期間の長期化です。

囲い込み 不動産|囲い込みで売主が失うものの想定ケース

※以下は、仕組みを説明するための想定ケースです(実在の個人の体験談ではありません)。3,000万円で専任媒介に出した物件に、他社の買主から購入希望が入ったものの、会社が「商談中です」と断ったとします。反響が伸びないまま3か月が過ぎ、2,800万円に値下げして売れた場合、売主は約200万円の損失です。一方、会社は両手仲介で、約96万円(上限・税別)の追加手数料を得ることになります。売主の損失と会社の利益が、同時に生まれてしまうのが、囲い込みの問題です。

2025年から変わったレインズのルール|取引状況の登録が義務に

囲い込み対策として、レインズのルールが強化されました。レインズには、2016年から「ステータス管理機能」があり、物件の取引状況を登録できました。この機能の実効性を高めるため、2024年6月に宅建業法施行規則が改正され、2025年1月1日から、取引状況の登録が義務になりました(国土交通省)。

囲い込み 不動産|レインズの取引状況登録ルールの変遷(2016年〜2025年)
項目内容
対象専任媒介・専属専任媒介で売り出す物件
取引状況の3区分「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」
登録証明書会社が売主に交付。2025年1月4日から2次元コードが記載される
売主専用画面2次元コードから、自分の物件の取引状況を確認できる
レインズ登録期限専任は契約の翌日から7営業日以内、専属専任は5営業日以内
状況の報告専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上

出典:国土交通省 報道発表資料、宅地建物取引業法・標準媒介契約約款に基づく一般的な内容。

売主にとって最大の変化は、自分の物件の取引状況を、自分で確認できるようになったことです。解説記事では、電話の問い合わせや内見の希望は「書面による購入申込み」にあたらず、会社の都合による「一時紹介停止中」も認められない、と説明されています。もし、実際には申込みがないのに「申込みあり」と登録されているなら、確認が必要です。

囲い込み 不動産|レインズの売主専用画面で取引状況を確認する流れ

見抜くうえで大切なのは、会社を疑うことそのものではなく、確認できる事実を先にそろえることです。レインズの登録内容、広告の掲載状況、内見の件数と問い合わせの件数。この3つは売主が数字で把握できます。数字を見て説明に矛盾があれば、そこで初めて会社に具体的に質問すれば足ります。感情的に疑う必要はありません。

囲い込みを見抜く5つのチェック

囲い込みは、外からは見えにくい問題です。そこで、売主が自分で確認できる5つのポイントを整理します。

囲い込み 不動産|囲い込みを見抜く5つのチェック

チェック1:登録証明書をもらっているか。専任・専属専任の契約をしたら、レインズの登録証明書が交付されます。受け取っていない場合は、登録されているのかを、会社に確認してください。

チェック2:売主専用画面で、取引状況を見る。証明書の2次元コードから、自分の物件の状況を確認できます。「公開中」になっているかを、定期的に見ましょう。

チェック3:「申込みあり」が長く続いていないか。書面による申込みがあるのに、なかなか成約しない状態が続くなら、実態を会社に説明してもらってください。

チェック4:問い合わせ・内見の件数を聞く。定期報告の中身が薄い、反響が極端に少ないときは、広告の掲載状況も含めて確認します。

チェック5:他社の紹介は受けているか。「他社経由の問い合わせは、どう対応していますか」と、はっきり聞くことが有効です。質問に曖昧な答えしか返ってこない場合は、注意が必要です。

囲い込みの疑いを減らすいちばん現実的な方法は、契約の段階で確認事項を決めておくことです。媒介契約書には、レインズへの登録期限(専任媒介は7日以内、専属専任媒介は5日以内。休業日を除く)と、業務の処理状況の報告義務(専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上)が定められています。契約前に「報告は書面でもらえるか」「他社からの問い合わせ件数も報告に含めてくれるか」を聞いておくと、後で確認しやすくなります。

また、一般媒介契約にすれば複数社に依頼できるため、1社が情報を抱え込む構造そのものを避けられます。ただし、一般媒介は会社側の積極性が下がる場合もあります。どの契約形態が合うかは、物件の人気度と、自分で動ける度合いによって変わるので、次の図のように整理して選ぶと判断しやすくなります。

売主ができる対策|媒介契約の選び方と、会社への伝え方

まず、媒介契約の種類を理解しましょう。一般媒介は、複数の会社に同時に依頼できます。専任媒介と専属専任媒介は、1社にしか依頼できません。

囲い込み 不動産|一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違い

囲い込みを避けるという意味では、複数社に依頼できる一般媒介は、選択肢の一つです。ただし、一般媒介には、レインズへの登録義務や、定期的な報告義務がありません。また、会社にとっては、他社に決められる可能性があるため、販売活動に力を入れにくい面もあります。一般媒介が安全で、専任が危険、と単純には言えません。

専任・専属専任を選ぶなら、次の条件を、契約前に確認しましょう。登録証明書をいつ渡すか、売主専用画面を確認できるか、報告の頻度と内容、他社からの問い合わせへの対応方針の4点です。契約期間は上限が3か月ですので、状況に疑問があれば、期間満了時に見直すことができます。

また、疑問が解消されない場合は、都道府県の宅建業担当窓口や宅地建物取引業協会などに相談する方法もあります。会社の対応に納得できない場合に、第三者に相談できることを知っておくと安心です。

会社選びの段階で見ておきたいのは、囲い込みをしないと言い切る会社かどうかではなく、確認に応じる姿勢があるかどうかです。売主専用画面の使い方を聞いたときに、画面の見せ方を具体的に説明できる会社は、情報を隠す意図が低いと判断できます。逆に、質問をはぐらかしたり、「任せてください」としか言わなかったりする場合は、他社にも査定を依頼して比較する価値があります。

不動産会社を選ぶときの5つの質問

査定を依頼する段階から、次の5つの質問をしておくと、会社の姿勢が見えてきます。

①他社からの問い合わせや買主の紹介は、どう扱いますか。

②レインズの登録証明書は、いつ交付されますか。

③売却活動の報告は、何を、どの頻度でしてもらえますか。

④両手仲介について、会社としての方針はありますか。

⑤この査定額の根拠は何ですか。

特に⑤は重要です。最も高い査定額ではなく、根拠に納得できる会社を選ぶことが、結果的に早く高く売ることにつながります。査定額が高すぎる会社には、契約を取るための数字ではないかを疑う視点も必要です。売却全般のコツは、不動産を高く売るコツ10選で詳しく解説しています。

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最後に、売却全体の中での位置づけを補足します。囲い込みは、売却で起こりうる損失の一つにすぎません。価格設定、売り出す時期、税金(譲渡所得の特別控除や取得費の扱い)、ローン残債との関係など、他の要素のほうが金額への影響が大きい場面もあります。囲い込みの確認は「最低限の防御」として押さえつつ、売却全体の設計は関連記事も参考にして進めてください。

よくある質問

Q. 囲い込みは違法ですか?

両手仲介そのものは違法ではありません。ただし、実際には紹介できるのに、虚偽の取引状況を登録して他社を断るような行為は、宅建業法上の問題となり、行政処分の対象になり得ます。

Q. 一般媒介なら、囲い込みは起きませんか?

一般媒介は複数社に依頼できるため、1社に囲い込まれるリスクは下がります。ただし、報告義務やレインズ登録の義務がないため、販売状況が見えにくくなる面があります。

Q. 売主専用画面が見られないときは?

まず、登録証明書を受け取っているか、2次元コードが記載されているかを確認してください。それでも見られない場合は、担当の会社に、確認用ID・パスワードの案内を求めましょう。

Q. 専任媒介の途中で、会社を変えられますか?

契約期間は上限が3か月です。契約の途中での解除は、契約書の解除条項によって条件が異なります。まず、契約書の内容を確認し、不明な点は会社に説明を求めてください。

まとめ|囲い込みは「知って、確認する」ことで防げる

囲い込みは、売主と会社の利益が食い違う構造から起きます。しかし、2025年1月から取引状況の登録が義務化され、売主が自分の物件の状況を確認できる環境が整いました。

専任媒介で契約したら、登録証明書を受け取り、売主専用画面を定期的に確認しましょう。そして、報告の内容に納得できなければ、遠慮せずに説明を求めることが大切です。

出典:国土交通省 レインズの機能強化について(売主向けリーフレット)/国土交通省 レインズのステータス管理機能/国土交通省 取引状況の登録制度の導入

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