
川崎でマンションを買ったのに、手放すことになる人がいるのはなぜ?
先に結論:マンションを売った理由の1位は「住み替え」(34.8%)で、2位の「売り時だと思った」と合わせて半分以上は前向きな売却です。
ただし残りの約4割は、転勤、離婚、相続、ローン返済苦など「売らざるを得なかった」売却です。売却相談の現場では、こうした人ほど「買うときに、売ることを考えていなかった」と話します。
この記事では、売却理由ランキングと、相談の多かった失敗パターンを紹介します。アンケートには出てこない管理費の値上げ・金利上昇・水害のリスクも、川崎ならではの事情とあわせて解説します。最後に、いま売ったらいくら手元に残るかが分かるシミュレーターも用意しました。
筆者より:大手不動産会社のコンサルティングと売買仲介に携わるなかで、マンションの売却相談を数多く受けてきました。相談に来る方の多くは、買ったときには「ずっと住むつもり」でした。売る理由は、買ったあとの人生の変化の中で生まれます。この記事では、個人が特定されないよう内容を一般化したうえで、実際の相談で多かったパターンをまとめています。
マンションを売却した理由ランキングTOP7
まずは、神奈川県でマンションを実際に売った150人が挙げた理由です。
【図解1】マンションを売却した理由(割合)
出典:イクラ不動産「イクラ不動産で不動産を売却した売主様に向けたアンケート調査」(掲載メディア:売却一年生)。調査時期:2022年10月〜2023年11月、対象:神奈川県でイクラ不動産を通じて不動産を売却した売主、回答数:150人。
この7つを「自分で選んだ売却」と「売らざるを得なかった売却」に分けると、見え方が変わります。
【図解2】売却の半分は「計画どおり」、4割は「想定外」
住み替え(34.8%)+売り時(19.6%)
タイミングを自分で選べる。高く売りやすい。
転勤(12.5%)+離婚(9.2%)+相続(9.1%)+金銭的理由(7.1%)
期限がある。相場が悪くても売るしかないことも。
灰色は「その他(投資用売却など)」7.7%。図解1のデータを筆者が分類。
後悔が生まれやすいのは、想定外の売却です。期限があるので売り時を選べず、ローンの残りが売却価格を上回る「オーバーローン」だと、売りたくても売れないこともあります。
売却理由別|相談の現場で多かった「失敗」と対策
ここからは、売却相談で実際によく聞いたパターンを、理由ごとに紹介します。「買う前に知っていれば防げた」ものばかりです。
アンケートに出ない3つの売却理由|管理費・金利・水害
アンケートでは「住み替え」や「金銭的理由」と答えていても、話を聞くとその裏に次の3つが隠れていることがよくあります。どれも、買った時点では見えにくく、住んでから効いてくるリスクです。
リスク1|管理費・修繕積立金の値上げ
「ローンは払えるのに、管理費と修繕積立金が上がって家計が苦しくなった」という相談は、ここ数年で明らかに増えました。数字で見ても、神奈川県の新築マンションの維持費は大きく上がっています。
【図解3】神奈川県 新築マンションの維持費(70㎡・月額)
2019年と2025年の比較。修繕積立金は6年で4割以上上がっています。
出典:東京カンテイ「三大都市圏 新築マンションのランニング・コスト」(2026年7月1日発表)。70㎡換算の月額。
- なぜ上がる? 人件費と工事費の上昇です。管理員や清掃の人件費、大規模修繕の資材と職人の費用が上がっています。
- 中古も同じ:国の調査では、修繕積立金の平均は25年間で約1.8倍(月1万3,054円)になりました。
- タワーマンションは特に注意:外壁の修繕に特殊な足場が必要で、エレベーターや設備も多いため、将来の修繕費が読みにくくなります。
リスク2|住宅ローンの金利上昇
日本銀行は2026年9月18日、政策金利を1.25%程度に引き上げました。変動金利の住宅ローンは、今後の基準金利の見直しで返済額が上がっていきます。
【図解4】金利が上がると、毎月の返済はいくら増える?
借入4,500万円・35年・元利均等返済の場合(借りた直後に金利が上がった場合の試算)。
変動金利の多くは「5年ルール」「125%ルール」で返済額の急増が抑えられますが、その分、元金が減りにくくなります。ルールがない商品もあるので契約内容を確認してください。
売却相談で多いのは、「ペアローンで借入額を最大まで増やした」ケースです。夫婦の収入を合わせて借りると、どちらかが育休や転職で収入が減っただけで家計が回らなくなります。さらに離婚すると、ペアローンは売る以外の選択肢がほとんどなくなります。
リスク3|水害(多摩川沿い・低い土地)
川崎市は、市の南西の境を多摩川が流れています。2019年10月の台風第19号(令和元年東日本台風)では、武蔵小杉駅周辺で浸水が発生し、タワーマンションの地下にあった電気設備が水につかって停電・断水しました。エレベーターが使えなくなり、高層階の住民の生活に大きな影響が出たことは広く報道されました。
外水氾濫
川の水があふれたり、堤防が壊れたりして起きる浸水。洪水ハザードマップで確認。
内水氾濫
大雨で下水道や排水路の水があふれて起きる浸水。川から離れていても起きる。内水ハザードマップで確認。
「タワーマンションの高層階だから関係ない」は間違いです。部屋が浸水しなくても、電気設備が地下にあれば停電・断水・エレベーター停止が起きます。また、水害の履歴やハザードマップの結果は、売るときに買い手から必ず聞かれるポイントです。
- 確認すること:川崎市の洪水ハザードマップ・内水ハザードマップ、電気設備(受変電設備)が何階にあるか、止水板などの浸水対策をしているか
- 重要事項説明:2020年8月から、不動産取引の重要事項説明で水害ハザードマップ上の位置を説明することが義務になっています
川崎のマンション価格推移|いまは売り時?
売却理由の2位「売り時だと思ったから」(19.6%)に関係するのが、価格の推移です。川崎市の中古マンションの成約単価は、2013年から2026年春までに約7割上がりました。
【図解5】中古マンションの成約単価の推移(万円/㎡)
70㎡に換算した価格も表示しています。
出典:東日本不動産流通機構(レインズ)のデータ。2013年と2026年5月は川崎市の値(家売り隊による集計)、2025年・2026年1〜3月期・2026年7月は「横浜・川崎市」の値(年報・REINS TOPIC・月例速報)。区分が異なるため、傾向の比較としてご覧ください。
| 期間(横浜・川崎市) | 成約価格 | ㎡単価 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 2025年(年間) | 4,224万円 | 64.72万円 | 価格-0.4% |
| 2026年1〜3月期 | 4,539万円 | 68.5万円 | +10.3% |
| 2026年7月(単月) | 4,267万円 | 65.62万円 | -3.3% |
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」「REINS TOPIC【2026年01〜03月】」「月例速報 Market Watch 2026年7月度」。
長い目で見ると大きく上がっていますが、2026年春をピークに、7月は前年を下回りました。ここに利上げが重なっています。「いつまでも上がる」前提で、無理な借入をして買うのは危険です。
価格は「築年数」で大きく変わる
2026年1〜3月期の横浜・川崎市では、築5年以内が6,794万円、築30年超が2,267万円でした。㎡単価は築25年を境に大きく下がります(築25年まで72.4万円、築30年超37.1万円)。築20年前後で買うと、売るときに「築25年の壁」を越えてしまうことも頭に入れておきましょう。
売却手残りシミュレーター|いま売ったらいくら残る?
「売らざるを得なくなったとき、ローンを返し切れるか」を確かめるツールです。これから買う人は購入予定の条件で、5年後・10年後に売ったらを試してみてください。
元利均等返済で残債を計算。売却費用は仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税)と、抵当権抹消・印紙などの諸費用20万円で概算。譲渡所得税は、居住用の3,000万円特別控除の範囲内として含めていません。
売却相談の現場から|川崎で後悔しないマンションの買い方
売却相談を受けていて感じるのは、「売りやすいマンション」を買った人は、想定外のことが起きても立て直しが早いということです。買う前に、次の6つを確認してください。
【図解6】「いつでも売れる」マンションの6条件
1
駅徒歩10分以内
転勤で「貸す」選択肢も残る
2
管理が良い
共用部の清掃・長期修繕計画
3
借入は年収の6〜7倍まで
金利+1%でも払える
4
水害リスクを確認済み
洪水・内水・電気設備の階
5
一般的な間取り
2LDK〜3LDK・60〜75㎡
6
名義とローンを単純に
ペアローン・共有持分は慎重に
現場でよく伝えていること
「このマンションを5年後に売ったらいくらか」を、買う前に仲介会社に聞いてください。同じマンションの過去の成約事例を出してもらえば、ある程度の目安は分かります。答えられない担当者や、「上がりますよ」としか言わない担当者からは、少し距離を置いたほうが安全です。
まとめ|「売ること」まで考えて買う
- マンションを売った理由の1位は住み替え(34.8%)。ただし約4割は転勤・離婚・相続・返済苦など想定外の売却
- アンケートに出にくい管理費の値上げ・金利上昇・水害も、売却のきっかけになっている
- 川崎の中古マンションは13年で約7割上昇したが、2026年7月は前年割れ。上がり続ける前提は危険
- 駅近・管理良好・無理のない借入・水害確認の4つがそろえば、想定外のことが起きても売りやすい
売却を考えている方へ
査定額を上げる準備や、高く売るための不動産会社の選び方は不動産を高く売るコツ10選|査定額が上がる方法を査定のプロが解説で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. マンションを売却する理由で一番多いのは?
神奈川県の売却経験者150人へのアンケート(イクラ不動産、2022年10月〜2023年11月)では、1位が住み替え(34.8%)、2位が売り時だと思ったから(19.6%)、3位が転勤・転職(12.5%)でした。離婚・別居(9.2%)、相続(9.1%)、ローン返済苦など金銭的理由(7.1%)も合わせると、約4割が想定外の売却です。
Q. 川崎のマンション価格はどう推移していますか?
レインズのデータでは、川崎市の中古マンションの成約単価は2013年の約46万円/㎡から、2026年5月には約78万円/㎡へ約7割上がりました。ただし横浜・川崎市の2026年7月の成約価格は4,267万円で、前年同月比3.3%下落しています。
Q. マンションを売ってもローンが残る場合はどうなりますか?
売却価格でローンを完済できない状態をオーバーローンといい、原則として足りない分を自己資金で用意しないと抵当権を外せず、売却できません。住み替えローンなどの方法もありますが、借入が増えるため慎重な判断が必要です。
Q. 武蔵小杉のタワーマンションは水害が心配です。
2019年の台風第19号では、武蔵小杉周辺で浸水が起き、地下の電気設備が浸水したタワーマンションで停電・断水が発生しました。購入前に、川崎市の洪水・内水ハザードマップと、そのマンションの電気設備の位置、浸水対策の実施状況を確認してください。
主な参考資料
- 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」「REINS TOPIC【2026年01〜03月】」「月例速報 Market Watch 2026年7月度」
- 東京カンテイ「三大都市圏 新築マンションのランニング・コスト」(2026年7月1日)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査」
- イクラ不動産「イクラ不動産で不動産を売却した売主様に向けたアンケート調査」(売却一年生、2022年10月〜2023年11月・神奈川県・N=150)
- 日本銀行 金融政策決定会合(2026年9月18日)
- 川崎市 洪水ハザードマップ・内水ハザードマップ
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の物件の購入・売却をすすめるものではありません。税金やローンの判断は、税理士・金融機関などの専門家にご相談ください。



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