
「一生賃貸」って、本当に損なの?
先に結論:一生賃貸のメリットは大きく、「損」ではありません。修繕費・固定資産税・頭金がいらない分、そのお金をNISAやiDeCoで運用できるのが最大のメリットです。
ただし、老後も家賃を払い続ける資金と、高齢になってからの部屋探しへの備えは欠かせません。ここを準備できる人にとって、一生賃貸は合理的な選択です。
この記事では、一生賃貸のメリット7つを図解で比較し、「賃貸+投資」と「購入」で35年後の資産がどう変わるかを計算できるシミュレーターも用意しました。
この記事を書いた人:SUNSET
大手不動産会社で査定・物件調査や売買仲介に携わり、多くの売却相談を受けてきました。「買った家を手放す理由」を数多く見てきた立場から、持ち家と賃貸を公平に比べます。
- なぜ今、「一生賃貸」を選ぶ人が増えているのか
- 一生賃貸のメリット7つ【一覧図】
- メリット①:人生の変化に合わせて「身軽に」住み替えられる
- メリット②:修繕費・大規模修繕の負担がない
- メリット③:固定資産税・都市計画税がかからない
- メリット④:まとまった頭金・諸費用がいらない
- メリット⑤:浮いたお金をNISA・iDeCoで運用できる
- メリット⑥:住宅ローンの金利上昇に振り回されない
- メリット⑦:災害や資産価値の下落リスクを背負わない
- 「賃貸は家賃の払い捨て」は本当?戻らないお金を比べてみる
- 【シミュレーター】賃貸+投資 vs 購入、35年後の資産はどっちが多い?
- 一生賃貸のメリットを最大化する部屋選びのポイント
- 一生賃貸のデメリットと、今からできる対策
- 一生賃貸で住居費を抑える5つのコツ
- 一生賃貸の人の年代別・資産づくりモデルプラン
- 一生賃貸についての「よくある誤解」3つ
- 逆に「持ち家」の方が向いているケース
- 一生賃貸に向いている人・向いていない人【8問チェック】
- まとめ|一生賃貸は「浮いたお金を育てる人」の選択肢
- よくある質問
なぜ今、「一生賃貸」を選ぶ人が増えているのか
ひと昔前は「家を買って一人前」という考え方が当たり前でした。しかし今は、あえて一生賃貸を選ぶ人が増えています。背景には、次の3つの変化があります。
① 住宅価格の高騰
首都圏でフラット35を使って建売住宅を買った人の平均購入価格は約4,835万円、年収の約7.3倍(2025年度)。家は「無理をしないと買えない」水準に。
② 金利の上昇
日銀の利上げで、低金利が前提だった住宅ローンの計算が変わりつつある。35年後の金利は誰にも読めない。
③ 働き方の変化
転職やリモートワークが一般的になり、「同じ会社・同じ場所に一生」という前提が崩れてきた。
さらに、新NISAの登場で、個人が非課税で長期投資できる枠が大きく広がりました。「家に大きなお金を固定せず、金融資産で備える」という選択が、以前よりずっと現実的になっています。
一生賃貸のメリット7つ【一覧図】
まずは全体像です。一生賃貸のメリットは、大きく「身軽さ」「お金」「リスク回避」の3つに分けられます。
【図解】一生賃貸のメリット7つ
身軽さ
① 住み替えが自由
転勤・家族の変化・収入の変化にすぐ対応
お金
② 修繕費がかからない
設備の故障・大規模修繕は大家さんの負担
お金
③ 固定資産税がない
毎年の税金を払うのは所有者
お金
④ 頭金がいらない
初期費用は家賃の数か月分
お金
⑤ 浮いたお金を投資へ
NISA・iDeCoで資産を育てられる
リスク回避
⑥ 金利上昇の影響なし
住宅ローンの返済額が増える心配がない
リスク回避
⑦ 災害・値下がりに強い
建物の被害や資産価値の下落を背負わない
ここからは、1つずつ具体的に解説していきます。
メリット①:人生の変化に合わせて「身軽に」住み替えられる
一生賃貸の最大の強みは、暮らしに合わせて住まいを変えられる身軽さです。
家を買うときは「今の家族構成」「今の勤務先」「今の収入」を前提に選びます。しかし、35年のローン期間中に、その前提が変わらない人はほとんどいません。
ローン残高より高く売れなければ、差額を貯金から払わないと家を売ることもできません。この「売りたくても売れない」状態は、不動産の仕事をしていると決して珍しくないのです。
【図解】ライフイベントが起きたとき、どう動く?
| 出来事 | 賃貸 | 持ち家 |
|---|---|---|
| 転勤・転職 | 解約して引っ越すだけ | 売却か賃貸に出す。単身赴任で二重生活も |
| 子どもが生まれる | 広い部屋に住み替え | 間取りを変えるのは難しい |
| 子どもが独立 | 小さく安い部屋へ移り、家賃を下げる | 使わない部屋の維持費と税金は続く |
| 収入が減る | 家賃の安い部屋に移れる | ローン返済は減らない |
| 近所トラブル | 引っ越しで解決できる | 簡単には離れられない |
賃貸は「失敗しても引っ越せばやり直せる」。この選択肢を持ち続けられること自体が、大きな価値です。
不動産の現場で感じること
「ずっと住むつもり」で買った家ほど、手放す理由は突然やってくる
売買仲介で売却の相談を受けていると、購入時は「ここに一生住む」と考えていた人が、10年もたたずに売却を考える場面に何度も立ち会います。理由として多いのは、次のようなものです。
- 転勤・転職で通勤できなくなった
- 子どもの成長や離婚など、家族構成が変わった
- 住宅ローンの返済や金利の上昇が家計を圧迫した
- 管理費・修繕積立金が上がり、毎月の負担が増えた
- 水害など、購入時に意識していなかったリスクを知った
どれも、買う時点では予測しにくいことばかりです。賃貸であれば「引っ越し」で済む話が、持ち家では売却価格とローン残高の差という大きな問題になります。
とくに40代以降は、親の介護で実家の近くに移る、子どもの独立で部屋が余る、といった変化が起こりやすい時期です。住まいを「固定」しないことで、人生の選択肢を残せるのが一生賃貸の身軽さです。
メリット②:修繕費・大規模修繕の負担がない
家を持つと、住宅ローンとは別に「建物を保つためのお金」がずっとかかります。賃貸なら、これらは基本的に大家さんの負担です。
- 設備の故障:給湯器・エアコン(備え付け)・トイレ・換気扇などの故障は、通常の使い方なら大家さんが修理
- 大規模修繕:外壁・屋上防水・配管の交換など、数百万〜数千万円単位の工事も大家さんの負担
- 修繕積立金の値上げ:分譲マンションのように、途中で積立金が上がる心配がない
【図解】持ち家で35年間にかかる維持費の目安
分譲マンション(管理費+修繕積立金)
一戸建て(外壁・屋根・設備交換など)
賃貸(修繕費)
マンションは首都圏の新築マンションの平均(管理費約2.2万円+修繕積立金約1.0万円/月、東京カンテイ調べ)が35年間変わらないと仮定した最低ラインで、実際は値上げで増えるのが一般的です。一戸建ては外壁・屋根の塗装2回、給湯器などの設備交換、水回りのリフォームを想定した目安です。
分譲マンションの修繕積立金は、新築時は安く設定され、築年数とともに段階的に上がることが多い仕組みです。国の調査では、計画上の積立金に対して実際の積立が不足しているマンションが約35%あり、将来の値上げや一時金の徴収につながる可能性があります。
不動産の現場で感じること
購入時に「修繕費」まで計算している人は多くない
査定や物件調査で長期修繕計画を確認すると、修繕積立金が将来段階的に上がる計画になっているマンションがほとんどです。ところが購入時には、毎月のローン返済額だけで「払える」と判断している人が少なくありません。売却相談で「積立金がこんなに上がるとは思わなかった」という声を聞くたびに、家は買った後もお金がかかり続けることを実感します。賃貸なら、この心配はそもそも生まれません。
一戸建ては管理費がない代わりに、修繕の計画も積み立てもすべて自分で行う必要があります。外壁や屋根は10〜15年ごとにメンテナンスが必要で、1回あたり100万円以上かかるのが一般的です。
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修繕積立金の値上げが資産価値にどう響くかは、築40年マンションのデメリットと修繕・売却の考え方で詳しく解説しています。
メリット③:固定資産税・都市計画税がかからない
土地や建物を持っている人には、毎年固定資産税(標準税率1.4%)がかかります。市街化区域では、さらに都市計画税(上限0.3%)が加わります。税額は「評価額×税率」で決まり、住んでいる限り毎年払い続ける税金です。
新築住宅には一定期間、税額が軽くなる措置がありますが、期間が終わると本来の税額に戻ります。土地の税金は、建物が古くなっても大きくは下がりません。
持ち家の税金(例)
年12万円×35年
=420万円
賃貸の税金
0円
(家賃に含まれる形)
年12万円は説明のための例です。実際の税額は地域・広さ・評価額によって大きく変わります。
もちろん、大家さんが払う税金や修繕費は、家賃の中に含まれていると考えるのが自然です。それでも、「いつ、いくら払うか」が家賃として毎月一定にならされているので、突然の大きな出費に悩まされないのが賃貸の安心感です。
メリット④:まとまった頭金・諸費用がいらない
家を買うときは、物件価格とは別に諸費用(登記費用・仲介手数料・ローン手数料・税金など)がかかります。目安は新築で物件価格の3〜7%、中古で6〜9%程度です。これに頭金を加えると、数百万円単位の現金が一度に出ていきます。
【図解】最初に必要なお金の比較(4,500万円の物件 vs 家賃12万円)
約815万円
約60万円
購入
賃貸
購入は頭金500万円+諸費用7%(約315万円)、賃貸は敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など家賃の約5か月分で試算した例です。
賃貸の初期費用は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などを合わせて家賃の4〜6か月分が目安です。購入と比べると、手元に残る現金がまったく違います。
この「手元に残った数百万円」をどう使うかが、一生賃貸で資産を作れるかどうかの分かれ道になります。
メリット⑤:浮いたお金をNISA・iDeCoで運用できる
一生賃貸で資産を作るカギは、頭金や維持費に使うはずだったお金を、ただ預金に置かず、長期で運用することです。
たとえば、頭金と諸費用にあたる約800万円を、年4%で運用できたと仮定すると、35年後には次のように増える計算になります。
【図解】簡易シミュレーション:800万円を年4%で35年運用
一度も追加で積み立てなくても、35年で約4倍。これが「時間を味方にする」複利の力です。
年4%で毎年複利運用できた場合の単純計算です。実際の運用成績は毎年変動し、元本割れすることもあります。
毎月の差額も積み立てると、さらに大きな差に
一生賃貸のメリットは、最初の頭金だけではありません。持ち家なら毎月払う管理費・修繕積立金・固定資産税の分も、賃貸なら運用に回せる可能性があります。
たとえば、毎月3万円を年4%で35年間積み立てると、元本1,260万円が約2,700万円になる計算です。最初の800万円の運用と合わせると、35年後には約6,000万円近い金融資産を作れる可能性があります。
頭金分800万円を一括運用
約3,200万円
月3万円を積立
約2,700万円
35年後の合計
約5,900万円
年4%・毎月複利の単純計算です。賃貸でも家賃を払うため、実際に積み立てられる額は家計によって変わります。
もちろん、これは「浮いたお金を一円も使わずに運用し続けた場合」の数字です。実際には、浮いたお金をつい生活費に使ってしまう人も多いはずです。だからこそ、一生賃貸を選ぶなら毎月の積立を自動にして、使えない仕組みを作ることが大切です。
運用する口座は、利益に税金がかからない新NISAと、掛金が所得から控除されるiDeCoが基本です。
新NISA
年360万円・生涯1,800万円まで非課税。いつでも引き出せるので、引っ越し費用や老後の家賃にも使える。
iDeCo
掛金が全額所得控除になり、毎年の税金が下がる。60歳まで引き出せないので、老後の家賃の土台に向く。
一生賃貸の人にとって、NISAは「家の代わりに持つ資産」です。持ち家の人が老後に「住む場所」を持つ代わりに、賃貸の人は「家賃を払い続けられる金融資産」を持つ、と考えるとわかりやすいでしょう。
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メリット⑥:住宅ローンの金利上昇に振り回されない
2026年は日銀の利上げが続き、住宅ローンの変動金利も上がってきています。変動金利で借りている人は、金利が上がると返済額や利息が増えるリスクを抱えています。
たとえば4,000万円を35年で借りた場合、金利が1%上がるだけで、毎月の返済は約2万円、総返済額は約800万円増える計算です。賃貸なら、こうした金利の動きに家計が直接振り回されることはありません。
元利均等返済で金利1.0%→2.0%とした場合の概算です。
メリット⑦:災害や資産価値の下落リスクを背負わない
家を持つということは、その場所と建物のリスクをすべて引き受けるということでもあります。
- 災害:地震・水害で建物が傷んでも、ローンは残る。保険で全額がまかなえるとは限らない
- 資産価値の下落:人口が減るエリアや、駅から遠い物件は、売りたいときに思った値段で売れない
- 周辺環境の変化:近くに大きな建物が建つ、商業施設が撤退するなど、自分では防げない変化
不動産の現場で感じること
「売りたいときに売れない」家がある
査定の現場では、同じ広さ・同じ築年数でも、駅からの距離、ハザードマップ上のリスク、管理状態によって査定額や売れるまでの期間に大きな差が出ます。購入時は気にならなかった条件が、売るときに「値下げの理由」になることもあります。資産を一つの家に集中させないという意味でも、賃貸と金融資産の組み合わせは理にかなった選択だと感じます。
賃貸なら、被害を受けても引っ越して生活を立て直すことができます。資産を「住まい」に集中させず、金融資産として分散しておけるのも、一生賃貸ならではのリスク管理です。
「賃貸は家賃の払い捨て」は本当?戻らないお金を比べてみる
一生賃貸を考えると、必ず聞くのが「家賃は払い捨て。買えば資産になる」という意見です。でも、持ち家にも払ったら戻ってこないお金はたくさんあります。
住宅ローンの利息、購入時の諸費用、毎月の管理費・修繕費、毎年の固定資産税。これらは家の価値には上乗せされず、払った時点で消えていくお金です。
【図解】35年間で「戻らないお金」の比較
購入(4,500万円・頭金500万円・金利1.5%)
合計 約3,140万円
賃貸(家賃12万円)
合計 約5,240万円
差額は約2,100万円。ただし賃貸の人は、頭金・諸費用の約800万円を運用に回せるので、その運用益で差がどこまで縮まるかがポイントです。持ち家には35年後に家という資産が残る点も忘れずに比べましょう。
維持費は月3万円、固定資産税は年12万円、更新料は2年ごとに家賃1か月分と仮定した概算です。
つまり、「賃貸は払い捨て、持ち家は資産」という単純な話ではありません。持ち家にも払い捨ての部分があり、賃貸にも運用で資産を作る道がある。この前提で比べることが大切です。
【シミュレーター】賃貸+投資 vs 購入、35年後の資産はどっちが多い?
「賃貸は家賃を払い捨て」と言われますが、本当にそうでしょうか。購入にかかるお金と毎月の差額を、賃貸の人が運用した場合と比べてみましょう。数字を変えると、結果がすぐに変わります。
賃貸の条件
購入の条件
35年ローン(元利均等)、諸費用は物件価格の7%、賃貸は2年ごとに家賃1か月分の更新料を払う前提です。賃貸の人は「頭金+諸費用」を最初に運用し、毎月の住居費が購入より少ない月は差額を積み立て、多い月は運用資産から取り崩すと仮定しています。家賃・管理費の値上がり、税金、売却時の費用は考慮していない簡易計算です。
初期値(4,500万円の物件と同じ程度の部屋を家賃15万円で借りる想定、金利1.5%、運用利回り4%)では、35年後の資産は賃貸+投資の方が多く残る計算になります。ただし、利回りを3%に下げると差は大きく縮み、家賃が高い・家の価値が落ちにくいといった条件では逆転します。
もう一つ大事なのは、持ち家の人は35年後以降、家賃がかからないということです。賃貸の人はその後も家賃を払い続けるので、結果に表示される「運用資産が家賃の何年分か」を見て、老後の期間をまかなえるかを確認してください。
大事なのは、どちらが絶対に得かではなく、賃貸を選ぶなら、浮いたお金を必ず運用に回すこと。預金のままでは、この比較は成り立ちません。
あわせて使いたいツール
老後に必要な資産の総額は、FIRE・老後資金シミュレーターや手取りから逆算する老後資金の作り方で確認できます。
一生賃貸のメリットを最大化する部屋選びのポイント
同じ一生賃貸でも、部屋の選び方で満足度とお金の残り方は大きく変わります。不動産の現場で、長く満足して住んでいる人に共通していたのは次のような点です。
【図解】部屋選びのチェックポイント
共用部の清掃や修繕が行き届いているか
更新料の有無と金額を契約前に確認
病院・スーパーまでの距離は老後も重要
水害・土砂災害のリスクを地図で確認
給湯器やエアコンが古すぎないか
故障時の対応が早いか口コミや内見で確認
賃貸は「合わなければ引っ越せる」のが強みですが、引っ越しにも費用がかかります。最初の部屋選びで失敗を減らすことが、身軽さとお金の両方を守ることにつながります。
一生賃貸のデメリットと、今からできる対策
メリットだけでは判断を誤ります。一生賃貸には、はっきりしたデメリットもあります。
デメリット①:老後も家賃を払い続ける
持ち家はローンを完済すれば住居費が大きく下がりますが、賃貸は生きている限り家賃がかかります。65歳から90歳まで、月8万円の部屋に住むと8万円×12か月×25年=2,400万円です。
デメリット②:高齢になると部屋を借りにくい
国土交通省の資料では、大家さんの約7割が高齢者の入居に拒否感を持っているとされています。孤独死や家賃の支払いへの不安が主な理由です。
こうした状況を受けて、2025年10月に改正住宅セーフティネット法が施行され、見守りなどのサポートが付いた「居住サポート住宅」の仕組みが始まりました。高齢者が借りやすい環境は少しずつ整いつつありますが、選べる部屋が若いころより限られる点は覚えておきましょう。
デメリット③:自由に改装できず、資産として残らない
壁の色を変える、間取りを変えるといったリフォームは基本的にできません。また、家賃をいくら払っても、家そのものは自分の資産になりません。だからこそ、別の形で資産を作る必要があります。
不動産の現場で感じること
賃貸の人ほど「住み替えのタイミング」が大事
不動産の仕事をしていると、賃貸の入居審査も年齢や収入の状況によって通りやすさが変わることを実感します。収入が安定している現役のうちに、老後も住み続けられる部屋へ移っておく。これが、一生賃貸で老後に困らないためのいちばん現実的な対策だと感じています。
【図解】一生賃貸で老後に困らないための4ステップ
STEP1 老後の家賃総額を計算する
「老後の家賃×12か月×年数」。月8万円×25年なら2,400万円が目安。
STEP2 頭金・維持費の分をNISA・iDeCoで積み立てる
家を買わない分、「家賃を払うための資産」を自分で作る。
STEP3 60代で「終の住まい」に住み替える
審査に通りやすい現役時代のうちに、駅・病院・スーパーが近く、家賃の安い部屋へ。
STEP4 保証会社・UR・サポート付き住宅を知っておく
保証人不要のUR賃貸や、居住サポート住宅など、高齢でも借りやすい選択肢を調べておく。
一生賃貸で住居費を抑える5つのコツ
一生賃貸は、家賃が一生続くからこそ「家賃を上手に抑えること」が資産づくりに直結します。
- 家賃は手取りの25%以内を目安に:家賃を上げすぎると、運用に回すお金がなくなり一生賃貸のメリットが消えます。
- ライフステージに合わせて部屋の広さを変える:子どもが独立したら、すぐに小さな部屋へ。持ち家にはできない最大の節約です。
- 更新のタイミングで条件を見直す:周辺の相場より高ければ、家賃の相談や住み替えを検討します。
- 住宅手当・借り上げ社宅を活用する:会社の制度があれば、家賃の負担を大きく下げられます。
- 更新料・礼金のない物件も候補に入れる:UR賃貸のように礼金・仲介手数料・更新料がかからない物件は、長く住むほど有利です。
家賃を月1万円下げられれば、年12万円、30年で360万円。これを運用に回せば、さらに大きな差になります。
一生賃貸の人の年代別・資産づくりモデルプラン
一生賃貸で老後に困らないためには、年代ごとにやることを決めておくと迷いません。
| 年代 | 住まい | お金 |
|---|---|---|
| 30代 | 家族構成や勤務地に合わせて身軽に住み替え | 生活防衛資金を作り、NISA・iDeCoの積立を開始 |
| 40代 | 教育費のピークに合わせて家賃を調整 | 頭金の代わりの資金を運用し、積立額を増やす |
| 50代 | 子の独立後、小さく安い部屋へ | 老後の家賃総額を計算し、不足分を確認 |
| 60代 | 審査に通りやすいうちに「終の住まい」へ | 運用資産から家賃分を少しずつ取り崩す |
ポイントは、持ち家の人がローンを返している期間に、賃貸の人は同じだけ資産を積み上げておくことです。そうすれば、老後に家賃を払い続けても、持ち家の人と同じように安心して暮らせます。
一生賃貸についての「よくある誤解」3つ
誤解①「老後は家賃が払えなくなる」
家賃が払えなくなるのは、老後の家賃を計算せずに過ごした場合です。現役時代に家賃の総額を見積もり、その分を運用で準備しておけば、年金と取り崩しで家賃は払えます。問題は賃貸そのものではなく、準備不足です。
誤解②「持ち家なら老後の住居費はタダ」
ローンを完済しても、固定資産税・管理費・修繕積立金・設備の交換は続きます。マンションなら月3〜4万円以上、一戸建てでも築30年を超えると大きな修繕が重なりがちです。老後の住居費がゼロになるわけではありません。
誤解③「高齢になったら絶対に借りられない」
借りにくくなる傾向はありますが、保証会社の利用、UR賃貸、居住サポート住宅など、高齢者向けの選択肢は増えています。さらに、十分な金融資産があれば、審査で預金の残高を示せることもあります。
逆に「持ち家」の方が向いているケース
公平に見ると、次のような人は持ち家の方が満足度が高くなりやすいです。
- 地元に根を張って暮らしたい人:同じ地域に住み続けるなら、住み替えの身軽さはあまり活きません。
- 貯金や投資が苦手な人:住宅ローンの返済が「強制的な貯蓄」になり、結果として資産が残りやすくなります。
- 広さや間取りにこだわりたい人:賃貸で希望どおりのファミリー向け物件を探すのは、意外と難しいものです。
- 資産価値が落ちにくいエリアで買える人:駅近や人気エリアなら、売却や賃貸に出す選択肢も持てます。
持ち家か一生賃貸かは、「どちらが得か」ではなく「自分の性格と人生設計にどちらが合うか」で選ぶのがいちばん後悔しない方法です。
一生賃貸に向いている人・向いていない人【8問チェック】
当てはまるものにチェックを入れてください。一生賃貸との相性がわかります。
向いている人
- 転勤・転職の可能性がある
- 家族構成がまだ変わりそう
- コツコツ投資を続けられる
- 家に強いこだわりがない
向いていない人
- お金があると使ってしまう
- 老後資金の準備がまだない
- 同じ地域にずっと住みたい
- 間取りや内装にこだわりたい
まとめ|一生賃貸は「浮いたお金を育てる人」の選択肢
- 身軽さ:転勤・家族・収入の変化に、引っ越しで対応できる
- 維持費なし:修繕費・大規模修繕・固定資産税を自分で払わなくていい
- 初期費用が少ない:頭金・諸費用の数百万円を手元に残せる
- 投資に回せる:その資金をNISA・iDeCoで長期運用するのが前提
- 老後対策は必須:家賃の総額を計算し、60代で終の住まいへ住み替える
持ち家か賃貸か、どちらが正解ということはありません。売却相談を通じて見てきたのは、「買ったから安心」ではなく、「状況が変わったときに動けるか」が暮らしの満足度を分けるということです。一生賃貸を選ぶなら、その身軽さと浮いたお金を、ぜひ将来の自分のために活かしてください。
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持ち家から賃貸へ住み替える方へ
今の家を売って賃貸に切り替えるなら、まずは売却価格を最大化することが大切です。不動産を高く売るコツ10選|査定額が上がる方法を査定のプロが解説もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 一生賃貸のメリットは何ですか?
転勤や家族の変化に合わせて住み替えられる身軽さ、修繕費・大規模修繕・固定資産税を自分で負担しなくていいこと、頭金や諸費用が不要なことです。浮いたお金をNISAやiDeCoで長期運用すれば、家の代わりに金融資産を作ることができます。
Q. 一生賃貸と持ち家、どちらが得ですか?
一概には言えません。購入にかかる頭金・諸費用・維持費の分を賃貸の人が運用した場合、35年後の資産は運用利回りや家の売却価格によって逆転します。賃貸を選ぶなら、浮いたお金を預金に置かず運用することが前提になります。
Q. 一生賃貸だと老後にいくら必要ですか?
老後の家賃×12か月×年数が目安です。65歳から90歳まで月8万円の部屋に住む場合、家賃だけで約2,400万円かかります。生活費とは別に、この分を準備しておく必要があります。
Q. 高齢になると賃貸を借りられなくなりますか?
借りにくくなる傾向はあります。国土交通省の資料では、大家の約7割が高齢者の入居に拒否感を持っているとされています。一方、2025年10月に改正住宅セーフティネット法が施行され、見守りなどが付いた居住サポート住宅の制度が始まりました。保証人不要のUR賃貸なども選択肢になります。
Q. 賃貸の人は固定資産税を払わなくていいのですか?
はい。固定資産税や都市計画税は、土地・建物の所有者が払う税金なので、賃貸で住む人には直接かかりません。ただし、大家が払う税金や修繕費は家賃に含まれていると考えるのが一般的です。
Q. 一生賃貸の家賃は、手取りのどれくらいが目安ですか?
手取りの25%以内がひとつの目安です。家賃が高すぎると、NISAやiDeCoに回すお金がなくなり、一生賃貸のメリットである「浮いたお金の運用」ができなくなります。
Q. 持ち家なら老後の住居費はかかりませんか?
ローンを完済しても、固定資産税・管理費・修繕積立金・設備の交換費用はかかり続けます。マンションでは管理費と修繕積立金だけで月3万円以上になることも多く、老後の住居費がゼロになるわけではありません。
主な参考資料
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査」
- 国土交通省「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の改正について」
- 総務省「固定資産税」、各自治体「都市計画税」
- 株式会社東京カンテイ「新築マンションのランニングコスト」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」、iDeCo公式サイト
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の住まい方や金融商品をすすめるものではありません。シミュレーションは簡易的な試算です。最終的な判断はご自身の状況に合わせて行ってください。



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